理研ら,高移動度のCQD超格子の作製に成功

理化学研究所(理研)と東京農業大学は,半導体コロイド量子ドットの高秩序な超格子薄膜を作製した結果,移動度の大幅な増強に成功し,キャリアドープによる金属的伝導性を初めて実現した(ニュースリリース)。

有機配位子に保護された安定なナノメートルサイズの結晶である半導体のコロイド量子ドット(CQD)は優れた発光・吸収特性を持ち,サイズで波長(色)を調整でき,色純度も高い。また,溶液プロセスが可能など,バルク化合物とは異なる特性を持ち,新たな機能性の発現も期待されている。

しかし,CQDは移動度の低さが障害となっており,その解消には,孤立したCQD特有の量子化された電子状態を保ちつつ電気伝導性を高める,すなわち,何百万,何千万というCQDの一つ一つの配向(結晶の向き)を揃える必要がある。

そこで研究では,半導体材料の一つで,オレイン酸などの有機配位子によって安定化された硫化鉛(PbS)のナノメートルサイズの結晶から成るCQDに着目し,CQDの表面を加工してCQD同士を直接接合できる新しい方法(エピタキシャル接合)に挑戦した。

このCQDは市販されており,優れた光学特性を持つ。このCQDを有機溶媒表面上に集積させた上で,CQDの特定の結晶面から有機配位子を除去してCQD同士を接合させ,「量子ドット超格子」とも呼ぶべき薄膜を形成し,それをシリコン基板上に写し取った。

ここでCQDを特定の結晶面を持つ多面体として扱うことで,面と面を向かい合わせてエピタキシャル接合させ,CQDが広い面積に配列した超格子構造を作り出し,秩序立った構造がミリメートルスケールにわたることを確認した。

このCQD超格子薄膜の移動度は13.5cm2/V・sと,商用CQDデバイス,量子ドットディスプレーの移動度の100万倍以上,量子ドット太陽電池の移動度の1,000倍以上に相当した。

電気抵抗の温度依存性を測定したところ,ゲート電圧が低いときには,温度を下げると電気抵抗が上昇するという絶縁体的な振る舞いであったのに対し,ゲート電圧を高くしてキャリア密度を上昇させると(キャリアドープ),電気抵抗が劇的に低下し,温度に依存しない金属的な振る舞い(金属的伝導性)を示した。

こうした現象は,これまでCQD集合体では見られず,新たな量子物性・機能の発現の場になる可能性があるという。光学特性に優れたCQD超格子で高い電気伝導性が得られたことは,優れた性能を持つ光電デバイスの開発が期待できる。また,電流駆動レーザー,超高感度光検出器などへの利用も考えられるという。

研究グループは,CQDは溶液プロセスによるデバイス作製が可能なことから,持続可能な社会構築にも貢献するとしている。

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