産総研ら,伸びて強度が増す透明バイオフィルム開発

産業技術総合研究所(産総研)と科学技術振興機構(JST)は,バイオマス由来のポリエステルとポリアミドを組み合わせた新しいプラスチック素材を開発した(ニュースリリース)。

バイオマス資源は,持続的な生産が可能であり,カーボンニュートラルな原料として期待されている。バイオマスから合成可能な生分解性高分子であるポリアミド4(ポリアミドの一種,以下「PA4」)はバイオマス原料から製造可能で,生分解性を示す数少ない高分子の一つであり,剛性,耐熱性が高いため注目を集めている。

しかし,PA4単体は,融点と熱分解温度が近いため成形時に分解することがある。また,柔軟性に乏しいためフィルム化した場合に割れやすくなるという問題もあった。改質のために石油由来の成分を必要とし,カーボンニュートラルや生分解性といった特徴が失われることがあるため,実用化には課題が残されていた。

今回開発した技術は,バイオマスから合成可能な生分解性高分子として知られるポリブチレンサクシネート(ポリエステルの一種,以下「PBS」)と,同じくバイオマスから合成可能なPA4を繰り返し結合させた新素材を得るもの。

開発したマルチブロック型共重合体は,初めに,PBS-b-PA4の開発で得られた,PBSの片末端をアミノ基(-NH2),およびPA4の片末端をカルボキシ基(-COOH)に制御する合成技術を応用し,両末端にアミノ基を導入したPBSと,両末端にカルボキシ基を導入したPA4をそれぞれ合成した。

次に両末端のアミノ基とカルボキシ基を縮合剤の共存下で100℃,1時間反応させ,アミド結合させることにより,PBSブロックとPA4ブロックが交互に繰り返し結合した高分子を93%以上の収率で合成することに成功した。

NMRによる構造解析と,GPCによる分子量の測定から,この高分子は想定通りPBSブロックとPA4ブロックが複数回繰り返してつながっている,マルチブロック構造をもつことを確認した。

この素材は,透明なフィルムとして成形することが可能。このフィルムは,汎用プラスチック水準の強度を示し,また,引き伸ばすほど強度が増すという特徴を有しているという。

研究グループは今後,合成経路を見直し,コストダウンを図る。また,物性や機能性の詳細な評価を通じて,この材料に適する製品群を選定する。さらに,別種のポリエステルやポリアミドの組み合わせの検証を通じて,多様なニーズにも応答可能な新材料の開発を目指すとしている。

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