蛍光ナノ粒子を用いた間接蛍光抗体法,国際標準に

著者: sugi

バイオ計測技術コンソーシアム(JMAC)が中心となり,コニカミノルタと共同で提案してきた,免疫組織化学における蛍光性ナノ粒子を用いた生体分子の定量化のための性能評価要件に関わる国際規格が,ISOの「ナノテクノロジー」専門委員会(ISO/TC 229)において検討され,ISO/TS 23366「Nanotechnologies — Performance evaluation requirements for quantifying biomolecules using fluorescent nanoparticles in immunohistochemistry」として発行された(ニュースリリース)。

間接蛍光抗体法は,特定の生体分子を認識する一次抗体とその一次抗体を認識する二次抗体を用いて,培養細胞や薄切下組織標本を染色して,特定の生体分子の局在や量を測定する方法。

従来,間接蛍光抗体法で特定の生体分子の場所や量を可視化するために使われてきた蛍光色素に比べ,ナノ粒子は明るい蛍光を発し,また褪色も非常に遅いため,蛍光像の撮影だけではなく,定量などの分析にも適している。

特に,コニカミノルタが開発した蛍光ナノ粒子PID(Phosphor Integrated Dots)は,均一なナノレベルの粒子径を有し,従来の蛍光色素よりも高い輝度や低褪色性により,従来法では達成できない高感度な定量的解析が可能になることから,Quanticellサービスとして,同社が事業展開している。

さらに,高輝度であるため,粒子からの輝点の数を計数することができ,輝点数と局在する生体分子の量が相関することを示すデータも得られていることから,新たな定量方法も提案している。

今回発行された規格は,二次抗体,もしくはビオチンを介して二次抗体と結合するストレプトアビジンなどの標識に,蛍光ナノ粒子を用いる間接蛍光抗体法を適用範囲とし,ナノ粒子を用いた間接蛍光抗体法の原理やナノ粒子の選択,定量システムなどの基本要件が定められている。

また,データの比較可能性や性能評価手法,異なったシステムにより解析したデータの相互比較をするための共通の参照物質,さらには検証や妥当性評価,報告に関する要求事項がまとめられている。定量システムの要件には、輝点数による定量方法も採用されているため,コニカミノルタが開発したPID関連技術を包含する国際標準となっている。

NMACは今回発行された規格により,PIDを含む蛍光ナノ粒子を利用した免疫化学組織染色法の,病理診断等の医療・診断分野へのさらなる普及が期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • 北大ら,時分割X線回折像でナノ粒子の回転を解析

    北海道⼤学と東京大学は,時分割X線回折像から高分子複合材料におけるナノ粒子の回転ダイナミクスを測定する新たなX線活用手法の開発に成功した(ニュースリリース)。 プラスチックやゴムに代表される高分子材料は,日常生活から産業 […]

    2025.10.10
  • 新潟大,蛍光分光法で無花粉スギの簡易識別法を開発

    新潟大学の研究グループは,蛍光分光法を用いた無花粉スギの簡易識別技術を開発した(ニュースリリース)。 無花粉スギの花粉を飛ばさない性質は,雄性不稔遺伝子と呼ばれる1つの潜性遺伝子で決まる。そのため,両親から雄性不稔遺伝子 […]

    2025.10.01
  • 東大,浮揚ナノ粒子で量子スクイージングを実現

    東京大学の研究グループは,空中に浮かせたナノ粒子の運動状態の量子スクイージングを実現した(ニュースリリース)。 量子スクイージングは,原子・分子・光子などの微視的な系を中心とする様々な系で揺らぎを極限的に低減し,非古典的 […]

    2025.09.25
  • 北大,水素とナノファイバーを合成する光触媒を開発

    北海道大学の研究グループは,金属錯体色素を複層化した光触媒ナノ粒子とアルコール酸化触媒分子を連動させることで,持続利用可能な資源であるセルロースからクリーンエネルギー源となる水素と高機能材料となるセルロースナノファイバー […]

    2025.08.28
  • 広島大ら,魚から発せられる光により鮮度を判定

    広島大学と宇和島プロジェクトは,生物が本来持っている蛍光(自家蛍光)を詳細に解析することにより,鮮魚の鮮度を非破壊的かつ定量的に評価できる可能性を調査し,少なくとも,トラウトサーモン,マダイ,ブリの3魚種に共通する蛍光成 […]

    2025.08.18
  • 産総研,1光子単位で出力制御な波長可変光源を開発

    産業技術総合研究所(産総研)は,光通信で使われる1530nmから1565nmの波長帯であるC-bandと呼ばれる波長帯の波長に対応し,1光子単位で正確に出力を制御できる波長可変の光源を開発した(ニュースリリース)。 光子 […]

    2025.08.18
  • 科学大,粘度測定を実現する蛍光色素の設計指針確立

    東京科学大学の研究グループは,凝集誘起発光色素(AIE色素)の粘度応答性発光を実験と理論の両面から系統的に調査し,従来の分子ローターと呼ばれる蛍光粘度センサーよりも高感度な分子の設計指針を確立した(ニュースリリース)。 […]

    2025.08.08
  • 科学大,酸フッ化物光触媒のナノ粒子化を実現

    東京科学大学の研究グループは,特殊な無機材料である酸フッ化物をナノ粒子として合成する手法を確立し,これを光触媒として用いることによって,可視光のエネルギーで水から水素を生成する反応の効率を,従来の約60倍にまで高めること […]

    2025.08.01
  • オプトキャリア