東京農工大学の研究グループは,カメラの撮像素子であるCMOSイメージセンサを受信機に用いる光カメラ通信(Optical Camera Communication;OCC)をベースに,LEDビジョンから送信される“見えない”データをスマートフォンのカメラで撮影して受け取る「Luminary AR」技術を開発した(ニュースリリース)。
OCCとは,送信機にLEDやディスプレーのような光源を,受信機にカメラを用いた可視光通信。デジタルデータを3色LEDの色へと符号化・変調して光信号として送出し,カメラで撮影した動画像の中から光を抽出し,そのRGB値などから信号を復調・受信する。
東京農工大学ではこれまでに,CMOSイメージセンサのRAWデータを用いた512色伝送により超多値化の世界記録を達成するなど,基礎技術開発を進めてきた。ただし,ユーザにとって身近なデバイスであるスマートフォンのカメラを受信機に用いるような,実際の活用例が従来ほとんどなかった,という課題があった。
研究グループは,LEDビジョンに投影される映像コンテンツに対して,デジタルデータを埋め込むための符号化・変調方式を開発した。この技術を用いることで,製品広告や企業PR,周辺情報など既存の画像・動画コンテンツをそのまま利用して,カメラを備えたスマートデバイスへのデータ伝送を実現できるようになった。
この成果により,LEDビジョンから送信される“見えない”データを「カメラを構える」動作によって受け取る,新たなARを展開可能になるという。ユーザにとって身近なデバイスであるスマートフォンのカメラを受信機に用い,従来のQRコードなどを一部置き換えることができる。
研究グループは,世界観を壊さず審美性の高い形態で付与されたデジタルデータを,カメラを構て読み取ることで,広告配信,イベント,エンタメ,地域振興など,幅広い活用が期待されるとしている。