北海道医療大学の研究グループは,光を利用した分子のキラリティの検出感度の上昇を目指して,多段階の光イオン化過程における,分子整列の影響を明らかにした(ニュースリリース)。
ある分子とそれを鏡に映した分子が異なる場合,それらの分子はキラル分子(あるいはキラリティを持つ分子)と呼ばれる。また,分子に光を照射すると,分子内の電子が放出されることがあり,放出された電子のことを光電子と呼ぶ。
キラル分子の光電子は,光の進行方向とその逆方向で放出される確率が異なり,この違いを利用して,分子のキラリティを検出できる。さらに,光電子の速度が大きい場合は,周囲の分子による光電子の散乱が少ない点や,飛び出す光電子の反跳でキラル分子が自発的に分離(いわゆる光学分割またはキラル分割)するなどのメリットが期待されている。
しかしながら,光電子の速度が大きい場合,検出感度が下がることが知られていた。今回,別の光を使って分子をあらかじめ整列させておくことで,光電子の速度が大きい場合でも,検出感度の低下を防げることが理論で確認できた。
具体的には,イオン化で飛び出す電子(光電子)が速い場合において,検出感度が最大20倍程度となる条件を発見したとしている。