独Fraunhofer IOFと独航空エンジン大手MTU Maintenanceは,航空機エンジンなど複雑な形状の3Dキャプチャを柔軟に行なうことができる携帯型センサー「goSCOUT3D」を開発したと発表した(ニュースリリース)。
開発したスキャナーは,柔軟かつシンプルで時間のかからないエンジンの3次元計測を可能にするもの。手持ちで簡単に操作できるため,エンジンの周囲を歩くことで高解像度の形状,色,質感の情報を含む3Dモデルを自動的に作成することができる。
高解像度カラーカメラ,慣性計測ユニット(IMU),タッチスクリーン付きディスプレーに加えて,リングライトが搭載されている。このリングライトは,ハンディタイプで必要な短い露光時間を可能にするために使用する。
これにより,1,000枚を超える画像を撮影・処理することができ,標準的な測定距離1m,画像フィールド約1平方メートルの場合,1分間に最大6m2の物体表面を記録することができるという。
2000万画素のカラーカメラを搭載することで,0.25mm以下の高い空間分解能を実現している。センサーヘッドの重量は約1.3kgで,充電式バッテリーにより数時間の連続稼働が可能。モバイル性が高く,柔軟に使用することができる。
この製品はいわゆる写真測量の原理を利用する。対象物の周囲を一度手動で誘導し,測定対象物の高解像度の2次元カラー画像をさまざまな角度から撮影して特徴的な点を特定し,複数のこの点の画像から三角測量の原理を使って3D点を計算し,最終的に全体の3Dデータを得る。
今回特に難しかったのは,2D画像の迅速な処理だったという。3Dの取得には,高解像度で画質の良い多数の個別画像が必要だが,これらの個々の画像に対応する処理は,一般的に非常に時間がかかる。
そこで,慣性計測装置(IMU)の位置と姿勢のデータを加えることで,写真測量の原理を拡張することに成功した。これにより,センサーの動きを大まかに判断し,画像内容が重なる画像を選択することができるようになった。これにより,複雑な測定対象物の場合,計測時間を半分以上短縮し,数分後には3Dモデルを作成することができるという。
この製品は,航空宇宙産業だけでなく,医療,研究,科学,さらにはAR(拡張現実)アプリケーションのデータとして利用することができるとしている。
Fraunhofer IOFは,光技術総合展示会「OPIE’23」(パシフィコ横浜,4月19日~21日)のドイツパビリオンのブース(C-32-9)にて,「goSCOUT3D」を初めて一般に公開する。また,「goSCOUT3D」を紹介する無料セミナーを4月20日(木)11:30-12:15に行なう。