三井化学は3月31日,旭化成が日本国内外で営むフォトマスク用ペリクル製品の製造,開発,販売に関する事業とその製造を請負う旭化成の連結子会社である旭化成EMSの全株式を,2023年7月1日(予定)に,旭化成から吸収分割により取得する契約を締結したと発表した(ニュースリリース)。
三井化学は,1984年にペリクルの販売を開始して以降,LSIペリクルの先端品市場,また,EUV露光に用いられるEUVペリクルについても高いプレゼンスを有している。同社は,この事業をIoT材料の中心製品の1つとして今後注力する事業と位置付け,事業強化・能力増強を推し進めてきた。
旭化成は,1986年の事業化以降,FPDペリクルにおいてはNo.1プレイヤーとして市場を牽引してきた。また,LSIペリクルにおいても,製造工程の改良・生産能力の増強等を推し進め,先端品(ArF-液浸)市場において近年市場シェアを拡大している。
しかしながら,FPDペリクル市場における競争力強化およびLSIペリクル市場における高精細化や品質保証水準の高度化への対応に一層の技術開発・追加投資等が継続的に必要なこと等から,パートナーとの協業・事業統合を模索しており,ペリクル事業を運営する三井化学との間で,両社のペリクル事業の今後の在り方について議論してきたという。
議論の結果,迅速な意思決定と事業強化の観点から,同事業を三井化学が旭化成から譲受し,FPDペリクルおよびLSIペリクル事業を運営していくことが最善との結論に至ったとする。今後,三井化学は,同社の岩国大竹工場,現旭化成EMSの延岡事業所を最大限活用し,事業拡大およびBCP対応強化を図り,ペリクル事業の新製品の開発や最先端の技術の向上を目指す。
旭化成EMSの事業の売上高(2021年3月期)は43億5100万円 。この吸収分割に際して,三井化学は74億円を旭化成へ支払う。