三菱電機は,300GHz帯のテラヘルツ波を用いて,一方向から一回の照射により任意の深さで対象物の断層イメージングを行なう業界初の技術を開発したと発表した(ニュースリリース)。
同社は,複数のアンテナ素子を規則的に配置したテラヘルツアレー型センサーを使用し,断層イメージを数ミリメートルの解像度で生成するセンシング技術を開発。生体への影響が少ない300GHz帯テラヘルツ波を用いた撮像を行ない,対象物の断層イメージングが可能なことを実証しているという。
従来は,各アンテナ素子からの信号の位相を調整して物理ビームを形成し,測定対象に物理ビームをさまざまな角度から複数回照射することで対象全体を撮像していたが,今回,一方向から一回の照射で反射波の測定を行ない,その測定データをもとに仮想空間上で複数地点に焦点を合わせたバーチャルビームを形成する,「バーチャルフォーカスイメージング技術」を新たに開発。一度の測定で広範囲の断層イメージを生成することで,移動する物体も撮像でき,セキュリティーゲートや生産ライン上での非破壊検査への適用が可能だとしている。
また,従来の物理ビームイメージング技術では,物理ビームを形成する際に余分なビームによるゴーストと呼ばれる誤検出が発生するため,これを解消するために多数のアンテナ素子を有する大型な装置が必要だったが,今回,広帯域な信号を有するテラヘルツ波により,周波数毎に異なるビーム形状(マルチモード)の形成が可能となり,得られた測定データに対し周波数ごとにバーチャルビームを形成し,複数のイメージを合成する「マルチモードビームフォーミング技術」を開発。周波数の異なるイメージを合成することで誤検出を低減し,装置の小型化が可能になったとする。
同社は,今回開発した技術をウォークスルー型のセキュリティーゲートや,ベルトコンベアなどで流れてくる生産ライン上での非破壊検査など,さまざまな場所での実用化に向けた製品開発を進めて,早期の事業化とサービスの展開を目指すとしている。