KEKら,中性子過剰なウラン同位体を40年ぶり発見

高エネルギー加速器研究機構(KEK)と理化学研究所らは,ウランの中性子過剰な同位体241U(ウラン)の合成と同定に初めて成功した(ニュースリリース)。

中性子過剰なアクチノイドは天然に存在するウランやトリウムを合成した星の中での元素合成過程の一つであるr過程を解明する上でその性質の情報が重要であるにも関わらず。それらの原子核は合成が困難であったためにこれまで実験的な研究が進んでこなかった。

実験は,理研のRIビームファクトリーにおいて,KEK元素選択型質量分離装置(KISS)と研究グループが開発した多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF-MS)を組み合わせて実施した。

238Uビームと198Pt(白金)標的との多核子移行反応で生成された多様な原子核は,アルゴンガス中で停止し,中性な原子になる。これらの中性な原子はガス流によって輸送され,レーザーが照射されてレーザー共鳴イオン化法により特定の元素がイオン化される。

ガス中から引き出されて高電圧によって加速されたイオンは,双極電磁石で質量分離された後,ヘリウムガス中で減速・冷却されてイオントラップに捕集される。MRTOF-MSで精密質量測定した悔過,中性子過剰なウランの同位体241Uの合成を初めて確認することができた。

今回,研究で新たに発見された241Uと既に発見されている242Uに対して初めての質量測定に成功した。また,241Npと242Npに対しては文献値に比べて質量の測定精度を向上することができた。

研究グループは,この研究で確立した手法を発展させ,目的核種に最適な反応系の採用,大強度ビームへの適応,測定装置の開発などにより,これまで研究が困難であった中性子過剰アクチノイド核に研究領域を大幅に拡大することが可能になるとしている。

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