日本大学の研究グループは,国際宇宙ステーション(ISS)に搭載された全天X線監視装置MAXI(マキシ)を用いて,数千年に一度と考えられる史上最強のガンマ線バースト GRB 221009AからのX線残光の初期観測に成功した(ニュースリリース)。
2022年10月,MAXIは全天で2番目に明るくなった突発X線天体を銀河面近くで検出した。これは,これまでで最も明るいガンマ線バーストより70倍明るいという観測史上最大のガンマ線バースト「GRB 221009A」のX線残光で,軟X線領域での残光の最初の観測となった。
19億光年も離れているにもかかわらず,ガンマ線バースト本体は静穏時の太陽と同程度というとてつもない強いX線強度だった。その発生頻度をこれまでに検出されたガンマ線バーストの明るさと距離の分布などから見積もったところ,千年から一万年に一度の現象であることがわかったという。
一方でMAXIが受けたX線残光も,これまでスウィフト衛星が観測した約400のガンマ線バーストの残光の中で最も明るいものよりもさらに1桁ほど明るかった。MAXIは約1時間半で全天を1回スキャン観測しているが,X線残光は急激に減光するため,通常,X線残光は受かっても0.1 Crab程度の強度のものが1回のみだった。しかし,今回は,発生41分後でありながら初回の観測では約2.5Crabもあり,その後も5スキャン(7.5時間)に渡って検出された。
GRB 221009Aは銀河面に近い位置で発生し,その光は銀河系内の塵の層をいくつも透過してきた。その結果,スウィフト衛星による観測では幾重にも重なる「X線リング」が観測された。MAXIのデータでは中心の残光と反射リングを区別できないため,スウィフト衛星のデータも用いてX線リングを考慮したMAXIのデータの詳細な解析を行なった。
その結果,初期のX線残光はその後の残光から予想される明るさより暗く,エネルギースペクトルも異なることがわかった。これらの情報は,ガンマ線バーストとして放出されるジェットの特徴を明らかにするのに役立つ。
過去最大の明るさだったがゆえに,これまでになくガンマ線バーストとその残光の特徴が数多く詳細に得られた今回の結果は,今後,まだ謎が多いガンマ線バーストとその残光を理解する上で多くの情報を与えるものと考えられるという。
また,MAXIによる全天X線観測においては,重力波観測がまもなく5月から再開されることもあり,研究グループは,ブラックホール新星をはじめとする新たな突発天体と突発現象の発見が期待されるとしている。