アストロバイオロジーセンターらの研究グループは,惑星が恒星の前を通過して食を起こすことを利用する「トランジット法」により,地球から71光年離れた場所にある赤色矮星K2-415のまわりを周期約4日で公転する「地球とほぼ同サイズの惑星」K2-415bを発見し,その組成が地球型惑星(岩石惑星)のものと矛盾がないことを確認した(ニュースリリース)。
銀河系内には,質量が太陽の半分程度以下の「赤色矮星」が最も多く存在しているが,赤色矮星は特に可視光線で暗く観測が難しい。惑星の大気や軌道を調査する上で,恒星の前を惑星が通過する「トランジット惑星系」は重要な観測対象となるが,特に質量が太陽の0.2倍を下回る「晩期M型矮星」のまわりでは,トランジットする系外惑星はこれまでほとんど見つかっていなかった。
研究グループは,2NASAケプラー衛星が取得したデータを詳細に解析し,地球から71光年離れた場所にある赤色矮星K2-415のまわりを周期4.02日で公転するトランジット惑星「候補」を発見した。惑星候補には惑星偽検出も多く含まれるため,すばる望遠鏡などを用いたK2-415の追観測を実施した。
K2-415は,質量が太陽の約0.16倍,有効表面温度が3000℃を下まわる非常に低温の恒星であるため可視光線では暗く,通常の可視光装置による観測が困難だったが,低温の赤色矮星は近赤外線で明るく輝くという性質がある。
研究グループはすばる望遠鏡に搭載された近赤外線分光器IRDを用いた観測を実施し,精密な視線方向の速度の変化などからK2-415の周りの惑星候補が地球の1.02倍の半径と約100〜140℃の表面温度を持つ本物の惑星(K2-415bと名付けられた)であることを確認した。
なお,K2-415はケプラー衛星の後継機によっても観測され,およそ80日間に及ぶ恒星の明るさの変化の観測からK2-415bによるトランジットが独立に検出された。研究グループは得られたデータを組み合わせて解析し,惑星半径や周期などを精密に決定した。
K2-415は,地球サイズの惑星を持つ最も軽く低温な恒星の一つで,このようなトランジット惑星系は4系しか見つかっていない。トランジット惑星系では,トランジットの詳細な分光観測により惑星大気や軌道等の情報を調べることが可能となる。
K2-415は地球から約71光年とトランジット惑星を持つ恒星としてはかなり地球に近い(=相対的に恒星が明るい)ことも今後の観測において有利に働くため,研究グループは,地球とは異なる世界である低温度星まわりの地球型惑星の解明に迫ることができるといている。