阪大,血管内で観察とレーザー治療の両立を実現

大阪大学の研究グループは,血管のような狭い空間へも挿入可能でありながら,内視鏡観察とレーザー治療光の自在な制御を同時に実現する,レーザーマイクロサージェリー技術を世界で初めて開発した(ニュースリリース)。

レーザ一を用いた生体組織の凝固・蒸散の制御技術は,幅広い診療科で低侵襲治療に貢献している。しかしながら,従来の技術では内視鏡画像観察のためのイメージング用ファイバーと,治療のためのレーザー照射用ファイバーを別々に実装する必要があり,血管内など体内の限られた空間において,患者に負担をかけない細径のシステムで観察と治療を両立することが困難だった。

研究グループでは,ファイバーバンドルスキャニング技術(複数のコアをもつ光ファイバーを介して,レーザースポットの位置を走査する技術)を応用し,一本の光ファイバーバンドルを介して,病変部の観察と治療のためのレーザー光走査を同時に実現する,イメージガイドレーザー照射技術を開発した。

直径ミリメートルオーダーの血管のような微細な空間において,病変部を観察しながら,狙った箇所に治療用レーザー光を照射することができ,レーザーによる凝固と蒸散の位置を数10µmの誤差内で制御できることを示した。

この成果により,血管内のような体内の狭く限られた空間において,病変部を観察しながらピンポイントにレーザー治療を行なうシステムの実現につながる。心臓の冠動脈や下肢末梢血管の治療など,既にレーザーが利用されている分野の治療をより安全で低侵襲なものにするだけでなく,これまで適用が難しいとされてきた領域におけるイメージガイド手術への拡がりも期待できるという。

研究グループは,超高齢化社会を迎える我が国において,今後さらに需要が高まる低侵襲治療のための新たなモダリティとして展開が期待されるとしている。

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