横浜国立大学の研究グループは,赤外波長領域の光コムを可視波長領域に変換し,高精度な可視デュアルコム分光技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
レーザーの光を用いた精密計測は,精密加工だけではなく,環境など生活に密着した分野まで応用できる。その応用を広げるためには,レーザーの波長域を広げることが不可欠となる。そこで,もともと赤外波長領域で発振する光コムを可視波長領域に変換し,それを用いた計測技術の開発が重要な研究課題となっている。
今回研究グループは,赤外波長領域の光コムを非線形光学結晶に入射させ,可視波長領域の光コムを発生させた。2つの可視光コムを用意し,そのうち1つの光コムはガスセルを通過させた後,もう一方の光コムを重ね合わせることで可視デュアルコム分光を実施した。
今回用いる光コムの櫛の間隔が従来の光コムよりも狭いため,実現した可視デュアルコム分光は従来と比べて,2.5~5倍に精度向上を実現した。
実験に用いた2台の赤外領域の光コムは,光の波の位相が同期されており,赤外領域の光コムが非線形光学結晶を通過した後,その周波数が2倍になる光コムと3倍になる光コムが発生する。今回は,周波数が3倍になる可視波長領域の光コムを反射鏡で分離させて,デュアルコム分光に用いた。検出器で2つの可視光コムの干渉を観測し,計算によりガスの吸収スペクトルを得た。
今後,高精度可視デュアルコム分光技術を用いることで,可視波長領域の原子や分子の吸収スペクトルを従来用も高い分解能で測定することが可能となる。研究グループは,高精度可視デュアルコム分光技術が,環境モニタリング及び長さ精密計測の応用範囲を拡大すると共に,精度向上にも寄与し,産業界への貢献も期待されるとしている。