熊本大学の研究グループは,可視光応答性光触媒,電子デバイス材料,電極触媒,顔料などの材料として期待されるバンドギャップ制御可能な金属酸窒化物半導体ナノシート(主成分として金属元素と酸素元素,窒素元素を含む)を層状化合物の剥離反応を経由することにより合成する方法を開発した(ニュースリリース)。
これまで多くのナノシートの研究がされてきたが,金属酸窒化物半導体ナノシートは,剥離に必要な層状物質の合成や層剥離が難しいことから,二次元材料の研究分野で研究があまり進展していない材料群だった。
研究では,これらの課題に対し,化学的に比較的安定して紫外光から赤色領域の光(波長では約600nmよりも短い波長の光)を吸収できるカリウム,ランタン,ニオブを含む層状酸窒化物(K1+xLaNb2O7-xNx)の合成とそのナノシート化を達成するとともに,酸素と窒素の比を制御することでバンドギャップ可変の酸窒化物(LaNb2O7-xNx)半導体ナノシートを合成する手法を開発した。
さらに,酸窒化物ナノシートと酸窒化物ナノシート層が交互に積層した超格子構造を作製し,これらの複合体のプロトン伝導特性,誘電率特性,可視光照射下での水分解光触媒活性を明らかにした。
特に,光触媒活性では,酸窒化物ナノシートと酸化物ナノシートのハイブリット体の光触媒活性が酸窒化物ナノシート単体よりも可視光照射下で高い水素生成活性を示した。酸化物ナノシートは可視光領域の光を吸収できないため,酸窒化物と酸化物ナノシート同士が面と面で接合したことによる強い相互作用が,光触媒活性を低下させる再結合を抑制している可能性が考えられるという。
この研究で開発した酸窒化物半導体ナノシートの合成方法をさらに深化発展させることで,多種多様な酸窒化物ナノシートが合成できるようになり,半導体のバンドギャップだけでなく,キャリア濃度や移動度などの物性も制御できるようになる可能性があるとする。
研究グループは,このような進化を遂げた半導体ナノシートが,高効率水分解光触媒の達成や電子デバイス,電極触媒等の材料として,持続可能社会の構築に貢献していくと期待している。