岩手大,新規光触媒半導体を創製しその機構を解明

岩手大学の研究グループは,高温超伝導を示す物質と類似のペロブスカイト構造を有する希土類酸化物半導体をサイトレイト法とよばれる特殊な手法により合成し,高い光触媒特性を示すことを明らかにした。特に,光触媒半導体のバンドギャップを元素置換により制御することで,酸化型のものから水素を生成する還元型の光触媒特性を示す物質を得ることが可能となった(ニュースリリース)。

光触媒物質は,光を照射することにより水を分解して水素を生成するので,水素エネルギー循環型社会の構築に必須とされている。また,この物質には,環境浄化やウイルスなどの有害物質を弱毒化するなどの働きがある。

現在空気清浄機などに実用化されている酸化チタンは,太陽光下では十分な機能を示さないことが知られており,新規の光触媒材料の創製が望まれている。この材料は,太陽光パネルで使用されている電池やデータ保存に使用するフラッシュメモリーなど身近に使用されている電子機器の心臓部にある半導体とおなじ性質をもっている。

今回研究グループは,光触媒物質の組成の最適化に,人工知能(AI)のアルゴリズムとしてよく利用されている機械学習の手法を適用した。また,第一原理計算の手法を適用して,希土類酸化物のペロブスカイト構造から光触媒特性に適したバンド構造を推定した。

光源に太陽光に類似したスペクトルを有するXeランプを使用した,環境汚染物質除去のシミュレーションとして考えらている光照射によるメチレンブルー溶液分解実験については,2時間程度でほぼメチレンブルー溶液は光触媒粒子との反応により完全に分解した。

酸化型と還元型の2つの特徴を有する物質を組み合わせハイブリッド化することにより,水分解による水素生成や有害物質の除去を効率的に実行できると期待されるという。

研究は数理・物理、電気電子通信及び化学コースの研究者から構成される分野横断的な研究グループによって行なわれた。研究グループは現在,植物の光合成機構と類似しているZスキーム型ペロブスカイト系光触媒複合薄膜の研究に取り組んでおり,触媒特性の向上が見出されているとしている。

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