京大ら,ペロブスカイト表面修飾で高効率高耐久達成

京都大学,理化学研究所,英Oxford大学らは,スズ-鉛混合系ペロブスカイト薄膜を効果的に表面修飾する手法(パッシベーション法)を開発した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池のさらなる高性能化に向けて,ペロブスカイト層の表面の構造修飾(パッシベーション)技術の開発が活発に行なわれている。

「スズー鉛混合型ペロブスカイト半導体」は,狭いバンドギャップ(~1.2eV)をもち,近赤外(~1050nm)までの光電変換も可能であり,タンデム型太陽電池のボトムセル材料としても期待されている。

研究グループは,このスズー鉛混合型ペロブスカイト半導体薄膜の上下表面構造修飾法として,エチレンジアンモニウム ジヨード(EDAI2)とグリシン塩酸塩(GlyHCl)を用いた手法を開発し,これにより世界記録となる23.6%の光電変換効率を報告している。

しかし,これらの処理により,どのようなメカニズムでペロブスカイト表面の構造修飾を可能にしているのか,その構造や電子的な効果の詳細はわかっていなかった。そこで研究では,新たにジアミンとフラーレンのカルボン酸誘導体を用いた表面処理法を開発し,これらの表面パッシベーションのメカニズムとその相乗的効果について明らかにした。

その結果,ペロブスカイト薄膜の表面をピペラジン(PP)などのジアミンで処理することで,表面でのプロトン移動反応によりジアンモニウムで構造修飾することが可能であり,さらにフラーレンのトリカルボン酸誘導体(CPTA)を塗布することで,ペロブスカイト薄膜表面のスズ上に選択的に配位結合できることを見出した。

これらの表面修飾を施したペロブスカイト半導体を用いて太陽電池を作製したところ,ジアミンだけで処理をした場合,20.8%の光電変換効率が得られ,表面処理により開放電圧が40mV向上した。

さらに,CPTAとジアミン(PP)の混合溶液で処理することでヒステリシスがなくなり,開放電圧がさらに向上するとともに,曲線因子(FF)と短絡電流密度も向上し,22.3%の光電変換効率を与えることがわかった。

三ヶ月間にわたるこの太陽電池セルの各月の光電変換効率の平均値は,21.10±0.67%,20.07±0.72%,21.61±0.40%を記録し,最大で22.7%の光電変換効率を得た。また,不活性ガス雰囲気下では,CPTAとジアミンで処理を行なったセルは2000時間後でも96%の特性を保持し,連続光照射条件下でも,>450時間でも90%の特性を保持した。

この成果はスズ系ペロブスカイト半導体の表面修飾にも適用可能で,鉛フリー型のペロブスカイト太陽電池のさらなる高性能化も加速するもの。研究グループはこの成果を,京大発ベンチャーのエネコートテクノロジーズにも技術移転するとしている。

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