広島大ら,合体途中銀河のエネルギー源の位置を特定

広島大学らの国際研究グループは,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用い,近傍宇宙にある合体銀河IIZw096を調査し,この銀河の「エンジン」とも言えるエネルギー源の正確な位置を世界で初めて突き止めた(ニュースリリース)。

宇宙にある銀河の大半は衝突を経験しながら進化している。銀河衝突が起きた際には,激しい星形成や巨大ブラックホールが形成されたり,より大きく成長したりと,銀河の性質に大きな変化をもたらす。

宇宙を理解するためにはこの変化を知る必要があるが,衝突の際に圧縮された銀河がもつガスやダスト(宇宙塵)により紫外線や可視光線は遮断され観測できず,赤外線やより波長の長い光を用いなければ観測できない。

研究グループは,近傍宇宙にある4つの衝突銀河を2022年7月に観測が開始されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用い,世界最高の解像度と感度の赤外線観測を行なった。このプログラムの対象は4つの衝突銀河。これらは可視光線ではそれほど明るくないが,赤外線では非常に明るく見える高光度赤外線銀河。今回,赤外線の放射源やその成因や性質の解明を目指した。

観測ターゲット4つのうちの1つの銀河であるIIZw096という衝突銀河は,研究グループが巨大な赤外線エネルギー源の存在を特定していた。しかし,ハッブル宇宙望遠鏡は中間赤外線よりも長い波長での観測ができず,一方で,赤外線が観測できるスピッツアー宇宙望遠鏡では空間分解能が足りず,放射源の正確な場所やその大きさまで特定できなかった。

今回,ハッブルよりも鏡の直径が2.5倍大きく,スピッツアーよりも感度が100倍高い,世界最高の解像度と感度の赤外線観測ができるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で,IIZw096のエネルギー源である「エンジン」の正確な位置を世界で初めて突き止めた。

銀河のエンジンとも言えるこのエネルギー源は,非常にコンパクトで小さな領域に集中していることも分かった。そのサイズは大きくても約570光年と見積もったが,銀河全体の大きさの1/100以下でしかない領域で,最大で銀河全体がもつ70%もの赤外線エネルギーを占める。

しかも,この領域は銀河中心から外れた場所に存在する。これまで見つかった衝突銀河では,銀河中心や衝突している境界面でこういった赤外線による巨大エネルギーが発生しているケースがほとんどで,IIZw096のように外れた場所に位置しながら,銀河全体からのエネルギーの大半が放射されていることは非常に珍しいという。

研究グループはその起源が何なのか,どのような性質のガスやダストをもつのか等,その解明が期待されるとしている。

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