北大,蛍光明滅を利用してRNA立体構造を検出

北海道大学の研究グループは,シアニン蛍光色素の光異性化状態の変化を検出できる手法を用いて,生細胞内でグアニン四重鎖構造というRNAの特殊立体構造を識別することに成功した(ニュースリリース)。

シアニン蛍光色素は,光励起に依存して分子構造の異性化(光異性化)を起こし,動的に消光する(蛍光明滅する)ことが知られている蛍光色素。研究グループは,この蛍光明滅の速度と蛍光を発する状態の割合から生きた細胞内における生体分子の構造変化検出に使えないかと着想した。

蛍光明滅状態を短時間かつ定量的に測定できる手法であるTransient state monitoring(TRAST法)を用いて,RNAの立体構造の一つであるグアニン四重鎖(G-quadruplex; 以下Gq)の生細胞内検出に成功した。

まず溶液における検証から,RNAの5’末端に標識した赤外蛍光シアニン色素であるAlexa Fluor 647の光異性化状態は,Gq構造となると蛍光明滅の速度が遅くなることに加え,蛍光を発する分子の割合が非Gq構造状態よりも増加することが分かった。

さらに生細胞内においてRNA分子の運動性が溶液中よりも低下した状態であっても,TRAST法を用いることで細胞内へ導入した蛍光標識RNAのGq構造を読み出すことに成功した。

RNAの中に形成されたGq構造は,遺伝子の転写,タンパク質への翻訳を制御するなど種々の生理的機能の調節に関与すると共に,筋萎縮性側索硬化症(ALS)やがんなどの疾患との関与が示唆されるなど,様々な生理恒常性維持や疾患の原因として着目されている。

その構造状態を生きた細胞の中で計測可能な検出手法の確立について研究グループは,世界的にもインパクトの大きなものだとしている。

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