ABC,宇宙における光合成の蛍光検出の可能性を検討

アストロバイオロジーセンター(ABC)は,光合成由来の蛍光がどのように検出され得るかを数値シミュレーションによって初めて見積もり,将来計画されている宇宙望遠鏡では蛍光検出は難しいものの,超低温矮星周りの惑星で同定しやすくなる条件・特徴があることを見出した(ニュースリリース)。

太陽系外惑星における生命存在の証拠として,光合成由来の光の特徴的なパターンを示す痕跡バイオシグネチャーの検出が期待されている。その1つにレッドエッジという,植生により反射する光のスペクトルの分光学的特徴がある。

光合成において太陽光から吸収した光エネルギーは,光化学反応に使われるか,蛍光や熱として放出される。地球のリモートセンシングではレッドエッジだけでなく,近年この蛍光も観測されている。

レッドエッジによって惑星表面を覆う植生の量を計測するのに対して,蛍光はストレス状態など,より詳細な光合成の活動を推定するのに使われる。そこで研究グループは,バイオシグネチャーとして光合成由来の蛍光が有望であるかを検証した。

研究では,太陽型星と,2つのM型矮星(GJ667C,TRAPPIST-1)をそれぞれ公転する地球型惑星において,異なる惑星大気や地表の条件を想定して,蛍光がどのように惑星のスペクトルに現れるかをシミュレーションした。

光合成生物の光吸収・蛍光スペクトルとしては,クロロフィルa,bを含む典型的な植生(Chl),バクテリオクロロフィルbを持つ紅色細(BChl)の2つのものを用い,生息域における放射場の下で獲得した光子数に応じて適切にスケールさせて蛍光強度を決定した。

また,これらの光吸収スペクトルを用いて放射輸送計算によって葉の反射スペクトルを算出した。このように光吸収・蛍光・反射を首尾一貫して扱うモデルを開発し,惑星スペクトルにどのように現れるかを調べた。

その結果,BChlの場合,雲や1,000nm付近の強い吸収体がなければ,レッドエッジの検出と併せて,蛍光が光合成の痕跡を同定するバイオシグネチャーになりうることが示された一方,NASAが計画する口径6mの宇宙望遠鏡では,蛍光を同定するには長期間の観測時間を要することもわかった。

TRAPPIST-1のような超低温星は,恒星大気における酸化バナジウム(VO)や水素化鉄(FeH),カリウムなどの吸収が強く,これらの吸収によって恒星からのフラックスが小さい波長域で,惑星からの蛍光が放出されると見かけの反射率が顕著に大きくなった。これは,将来の超大型地上望遠鏡によって高分散で蛍光を観測するのに良い特徴である可能性があるという。

研究グループはこの成果について,生物学と天文学,また,理論と観測をつなぐ成果だとしている。

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