東北大学の研究グループは,「ソーラーEVシティー」構想について,インドネシアの首都ジャカルタにおいて活用することによる脱炭素化の効果を分析した(ニュースリリース)。
研究グループは,屋根上PVとEVを蓄電池として活用しながら都市の脱炭素化を行なう「ソーラーEVシティー」構想を提案している。PVや風力発電は,天候に発電が左右される変動電源であり,蓄電池等と組み合わせて使用する必要がある。
また,CO2排出の大きい自動車は,EVへの置き換えが予想されるが,屋根上PVとEVを組み合わせることで,CO2フリーの電気をEVに供給できるだけではなく,EVのバッテリーを蓄電池としてPVの変動を吸収し,安定した電力を供給するのに役つ。
研究グループは,このシステムを日本の都市で活用すると,経済性の高い大幅な脱炭素化が可能であることを示したが,電気料金が安い発展途上国ではPVが比較的高価であり,また,低緯度地域の発展途上国は,経済条件以外にも気候など様々な要因が日本と異なるため,PVとEVシステムの効果を分析する必要があった。
そこで研究では,インドネシアの首都ジャカルタにおいて,屋根上PVとEVによる脱炭素化ポテンシャルの分析を行なった。分析には技術経済性分析を用い,既存のエネルギーシステムと,導入する再エネ技術を比較した。
電力に関しては,一時間毎の需給バランスを一年間分分析し,EVの電力需要の増化も考慮して計算した。都市の屋根上面積の70%をPV敷設可能としつつ,実際のPVの容量は最も経済性の高くなる値を計算した。
また,全ての乗用車がEVになったと想定し,EVバッテリーの半分をPVの蓄電池として利用することを想定した。PVのコストや電気料金などの経済指標は,現地の値を用いた。
その結果,ジャカルタにおいても屋根上PVとEVを活用することで,大幅な脱炭素化が可能となることがわかった。2030年のPVやEVのコスト見積もりで試算を行なうと,電力と自動車からのCO2排出を75-76%減らしながら,エネルギーコストの33-34%が削減可能となる。現在,ジャカルタは大気汚染が深刻な課題となっているが,これも大幅に改善されることが予想されるという。
研究グループは,これらの実現には,まず,屋根上PVとEVの導入を進めながら,EVから建物に電力供給が可能なV2H(Vehicle to Home)や V2G(Vehicle to Gid)といったシステムや,電力システムのデジタル化やICTを活用して電力システムの効率を高めていくことが必要だとしている。