東大ら,宇宙フィラメントからX線信号を検出

Kavli IPMU東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)らは,最新のX線宇宙望遠鏡SRG/eROSITAを用いて,宇宙フィラメントの高温プラズマからの熱放射に関連したX線信号の検出した(ニュースリリース)。

大規模サーベイで観測された数百万個の銀河は,宇宙にランダムに分布しているわけではない。銀河は集団化して銀河団を形成し,銀河団はフィラメントと呼ばれる細長い構造によって繋がり,その隙間には空洞ボイドと呼ばれる銀河が存在しない領域が広がっている。

このような宇宙の構造を「宇宙の網」という。宇宙の網の構造を構成する銀河は,バリオンと呼ばれる通常の物質の10%程度を占めるにすぎず,残りの90%はガス状の物質によって構成されている。しかし,これらを含めても,通常の物質の半分から3分の1は検出されず,宇宙の奥深くに隠されている,いわゆる「ミッシングバリオン問題」となっている。

宇宙物理学研究所(フランス国立科学研究センター)の研究グループは,30年前のROSAT全天サーベイデータを用いて,約15,000個の大規模宇宙フィラメントからのX線信号を統計的解析することで,今回初めて,宇宙網におけるバリオンの欠損を明らかにした。

さらに,Kavli IPMUとの共同研究者により,最新のX線サーベイSRG/eROSITAを用いて,宇宙フィラメントの高温プラズマからの熱放射に関連したX線信号の検出を間違いなく確認した。

この信号は,SRG/eROSITA共同研究によって発表された最初の140 deg2サーベイ内のわずか460個のフィラメントから検出され,その詳細解析からプラズマの密度と温度を精密に捉えることに成功した。

しかし,熱放射の起源とそれがどのように宇宙の網の中で進化してきたかという基本的な問題は明らかにされておらず,研究グループは,今後公開される全天観測衛星SRG/eROSITAや,将来計画されている大型X線観測装置を利用し明らかにする必要があるとしている。

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