慈恵会医科大学とエルピクセルは,大腸内視鏡の画像情報(動画)からAI(人工知能技術)を用いて,大腸ポリープ候補の検出を支援するソフトウェア「EIRL Colon Polyp(エイル コロン ポリープ)」を共同開発し,深層学習を活用したプログラム医療機器として,薬事承認を取得した(ニュースリリース)。
現在,約20-40%の腫瘍性ポリープの病変が大腸内視鏡で見落としていると報告されている。内視鏡医の腫瘍性ポリープの発見率(ADR)が1%上昇することで,将来の大腸がんが3%減少できる可能性も報告されている。
ADRの改善を目標として研究グループは,内視鏡医の技能や機械の性能によらず検査の精度と効率化の改善を図るため,従来の内視鏡システムにも対応が可能な人工知能を用いた大腸内視鏡検査支援システムの開発に取り組んできた。
約6万5千枚の大腸ポリープの画像データを学習用データとし,深層学習により大腸ポリープを自動で認識するコンピュータ診断支援システムを構築した。2018年5月時点に行なった精度の検証では,病変検出の感度および陽性的中率はそれぞれ98.0%と91.2%,通常内視鏡では発見が困難とされる平坦かつ微小病変に対象を限定した場合でも感度および陽性的中率は各々96.7%,93.7%と良好だった。
また,2019年から2020年にかけて国内4施設で多施設共同無作為化比較試験を実施し,実臨床においても腺腫の見逃し率が,このシステムを使用しない場合36.7%だったのに対し,使用する場合は13.8%に改善を認めた。
今回,初版としてオリンパス製内視鏡の対応システムのソフトウェアについて単体性能試験を試験し,結果が感度98.1%,特異度95.0%が得られ合格基準に達したため薬事承認申請を行なった。
そして2022年11月14日に医用画像解析ソフトウェア「EIRL Colon Polyp」(一般的名称:病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム)が承認を取得した。
今回の薬事承認の取得は,臨床の実用化に向けて大きな進展となるもの。すでに東京慈恵会医科大学附属病院にこのシステムは設置され,臨床の現場での評価に基づき改良に取り組んでいるという。
診断支援のみならず腫瘍と非腫瘍の組織診断の予測までリアルタイムに行う人工知能支援システムや富士フィルム製内視鏡対応のシステムを構築しており,今後も更新していく予定。研究グループは,幅広く質の高い大腸内視鏡検査を提供することで大腸がんの発生を防きたいとしている。