東北大ら,ガンマ線バーストを電波・可視光偏光観測

東北大学,台湾国立中央大学,MITOS Scienceは,アルマ望遠鏡とヨーロッパ南天天文台・超大型望遠鏡を使い,宇宙最大の爆発現象である「ガンマ線バースト」の電波と可視光における偏光の同時観測に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

ガンマ線バーストは,宇宙最大規模の爆発現象であり,非常に高いエネルギーを持った光であるガンマ線が短時間観測される。その特徴から,ショートガンマ線バーストとロングガンマ線バーストに分類されているが,どちらのガンマ線バーストも膨大な爆発のエネルギーをさまざまな波長の光に変換する。

この光は,ガンマ線から電波までの幅広い波長で観測され,望遠鏡で観測した光を集めて積算することによってどれくらいの爆発エネルギーであったか推定できるが,爆発エネルギーが光に変換される効率はこれまで測定できなかった。

研究では偏光を手がかりに,この変換効率の測定に初めて成功した。天文学観測では偏光測定は格段に難しく,100億光年も離れたガンマ線バーストの光を捕らえるためには,最も大型の観測装置を用い,さらに,可視光と電波で偏光測定するには複数の大型望遠鏡を緊密に連携させる必要がある。

そのため研究グループは,ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡と世界最大の電波望遠鏡アルマを用い,2019年12月に発生したガンマ線バーストGRB191221Bを観測した。

この典型的なガンマ線バーストの残光の同時偏光観測は,時々刻々と変化するガンマ線バースト残光が十分明るいかどうか確認することで,爆発からわずか2.5日後に行なうことができた。

その結果,電波の偏光度は可視光よりも低いことが明らかになった。波長による偏光の違いから,残光を放射している衝撃波の詳細な状態,特に,偏光を使わなければ観測できない隠れたエネルギーの割合を推定できるため,爆発エネルギーが光へ変換される効率を測定することができるとする。

その結果,変換効率はこれまで100%と想定されていたが,今回の結果は約30%以下となった。つまり,この典型的なガンマ線バーストの本当の爆発エネルギーがこれまでの方法の推定より3.5倍以上大きかったことになる。

爆発エネルギーのもとになるのは爆発前の星の重力のエネルギー。もし10倍以上大きければ,典型的なロングガンマ線バーストの起源となる星の重さや爆発の理論の修正を迫ることになるという。

宇宙で最初に誕生した星は,それが引き起こすロングガンマ線バーストを検出することで発見できる可能性があるという。その重さの推定は宇宙の進化史の解明にもつながるとしている。

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