山形大学と国立台北科技大学は,混合カチオン型ペロブスカイトナノ結晶Csx-1FAxPbBr3と自己修復性ポリマーを組み合わせることで,高性能な自発光型発光ダイオード(LED)や高演色性を有するバックライト型白色LED,低閾値なペロブスカイトレーザーの開発に成功した(ニュースリリース)。
ペロブスカイトナノ結晶はハロゲン組成や粒子サイズにより発光波長の制御が可能であり,シャープな発光スペクトルと非常に高い発光量子収率を示すことから,次世代発光物質としてLED材料,ディスプレー用バックライト光源,低閾値レーザーなど幅広いアプリケーションへの応用展開が期待されている。
しかし,ペロブスカイトナノ結晶は酸素や水に対して極めて敏感であり,その優れた光学特性をエレクトロニクスデバイスへ活用するには高いハードルがあった。
そこで,山形大学の研究グループが開発した混合カチオン型ペロブスカイトナノ結晶Csx-1FAxPbBr3と国立台北科技大学の研究グループが合成した自己修復性ポリマーを混合することで,高い安定性と優れた自己修復機能をもつ発光材料を創出した。
Csx-1FAxPbBr3は,イオンサイズの異なる有機および金属カチオンを用いた混合カチオン組成により,優れた発光特性(発光波長515nm,半値幅22nm,発光量子効率95%(薄膜では86%))をもつ緑色発光のナノ結晶を合成し,ペロブスカイトナノ結晶LEDの高性能化を達成した。
また,自己修復性ポリマーと緑および赤色ペロブスカイトナノ結晶を用いることで,バックライト型LEDに応用可能な高演色な白色発光(0.33,0.34)を達成した。
開発したCs0.5FA0.5PbBr3ナノ結晶薄膜では,低閾値での増幅自然放射(ASE)特性が発現しており,割れたガラス基板を自己修復性ポリマーで補修したデバイスにおいてもASE特性を示し,低閾値でのASEの発振が可能なレーザーデバイスの応用にも成功したとする。
さらに,自己修復性ポリマーは,耐水生や伸縮性を有するだけでなく,ペロブスカイトナノ結晶中の鉛イオンの漏出についても効果的に抑制でき,次世代のオプトエレクトロニクスデバイスにも求められる伸縮性と機械的強度を両立することに成功したという。
これらのことから研究グループは,ペロブスカイトナノ結晶と自己修復性ポリマーを融合することで,伸縮性と機械的強度の両立をしたオプトエレクトロニクスデバイスを創出できるとしている。