大阪公立大学の研究グループは,睡眠時(閉眼時)における光環境を適切に把握するため,閉眼時のまぶたの光透過率を測定した結果,閉眼時に感じる照明の明るさは,これまで考えられていたよりも大幅に高いことを明らかにした(ニュースリリース)。
睡眠不足や睡眠障害は,健康上の問題や生活への支障を生じさせることから,それらを解消することを目的として,睡眠に影響を与えるさまざまな要因の解明が進められている。
その1つに光環境があり,日中や入眠時,睡眠中に暴露する光が,生活リズムや睡眠の質に影響を与えることは既に報告されている。その際,光環境を表すために使われる照度や色温度といった指標は,開眼時の明所視における視覚特性に基づいて作られている。
しかし,睡眠中は眼を閉じているため,まぶたを透過することで網膜に届く光の状態は,照度や色温度で表されるものとは大きく異なっていると考えられる。そのため,睡眠中(閉眼時)の光環境を適切に把握するためには,まぶたの光透過率や閉眼時の明るさの感じ方を知る必要がある。
過去にまぶたの光透過率を測定した研究はあったが,極端に低照度であったり,片眼だけの評価であったりと日常生活における照明環境とは大きく異なるものだった。
研究では,照度100 lxと比較的明るく,顔全体(両眼)が照らされている条件で,延べ33名を対象に実験を行なった。両眼の開閉に応じて照度を増減させる照明装置を用いて,開眼時と閉眼時の明るさ感が一致する条件から,閉眼時の光透過率を測定した。光源には,赤色,黄色,緑色,青色の単色LEDと白色LEDを使用した。
その結果,過去に測定されたまぶたの光透過率(0.3%〜14.5%)から予測されるよりも,数倍から10倍程度の明るさを感じていることがわかったという。照明の色による違いも大きく,赤色光は明るく感じるのに対し,青色光は暗く感じることもわかった。さらに,個人差も大きく眼を閉じてもほとんど明るさ感が変わらない人がいることがわかった。
閉眼時の光環境を適切に把握できるようになったことで,入眠時の照明,昼寝や深夜交通に適した照明などさまざまな状況において,睡眠に適した照明の研究が進むことが期待されるといする。
例えば,透過率の低い光色は,眼を閉じた人だけ暗く感じることから,災害避難所など,起きている人と寝ている人が同居する空間の照明に活用できる。
しかし,大きな個人差が生じた原因は未解明。研究グループは心理効果が主要因と考えているが,今後は原因の探求とともに,睡眠不足や睡眠障害との関連についても調査していくとしている。