京産大ら,ブラックホール周辺構造を赤外線観測

京都産業大学らは,銀河系外天体の赤外線観測で世界最高の解像度を達成し,これにより,大質量降着中の巨大ブラックホールが,噴出するジェットに垂直な明るいリング構造に取り囲まれていることを確認した(ニュースリリース)。

宇宙の銀河の中心部には,質量が太陽の100万倍から10億倍程度の巨大ブラックホールがほぼ普遍的に存在するとされている。こうした巨大ブラックホールにガスが降着する(落ち込む)際には,中心部に強い紫外光を発する円盤状の構造が形成され,これが巨大ブラックホール系の「エンジン」部になると考えられている。

この中心部からは高エネルギープラズマのジェットが放出されている場合もあり,こうした円盤とジェットが周辺部と激しい相互作用を起こす源となる。現在のところ,この円盤構造自体は視直径(地球から見た大きさ・角度)が小さすぎて,その形を直接捉えることはできない。

しかしながら,もしこの円盤構造が本当にあれば,このさらに外側に,ダストからの放射で明るく光るリング状の構造が存在すると予測されてきた。ダストは重元素でできた砂のような粒子で,ブラックホール系の中心部では温度が高すぎて溶けてしまうが,中心部から十分に離れた1200℃程度以下の領域には溶けずに存在し,中心部からの紫外光に熱せられて,リング状に強い赤外線を放っていると考えられる。

これを検出することができれば,中心部の円盤構造の存在を確かめることになり、「エンジン」部および周りとの相互作用の理解を大きく進めることができる。

しかし,ダストリングは横から見ようとするとダスト粒子自体によって光が吸収されてしまい,なかなか形をとらえることができない。そこで研究グループは,地球からこの構造を上から見ることができ,かつ最も明るい質量降着巨大ブラックホールである近傍銀河NGC4151の中心部にターゲットを絞った。

検出には,複数の赤外線望遠鏡を用いて非常に高い解像力を実現する必要があり,かつこれら複数の望遠鏡が天体に対して適切な向きに並べられている必要がある。米CHARA干渉計は6つの望遠鏡で構成され,様々な角度から天体を観測できる。

研究グループは,CHARA干渉計を用いてNGC4151の中心核を観測し,噴出するジェットと垂直な方向に現れるダストリングを実際に検出することに成功した。そのためには補償光学をCHARA干渉計の各望遠鏡に新たに装備する必要があり,これによって観測が可能になったという。

今回の成果により,この巨大ブラックホール系を宿す母銀河とどのように相互作用をしているのか,さらなる理解が進むと研究グループは期待している。

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