東大,高色純度の青色ペロブスカイトQDを合成

東京大学の研究グループは,立方体の純青色ペロブスカイトQDを高精度かつ無欠陥で合成し,蛍光発光波長463nm,半値幅15nm,蛍光量子効率97%という,BT.2020色度に肉薄する発光を実現した(ニュースリリース)。

有機発光材料を高輝度の量子ドット(QD)に進化させたQD-LEDは,高い色純度と高い発光効率を同時に実現できる次世代ディスプレー技術として期待されている。QDは,数nmから数十nmの結晶構造をした材料であり,材料や結晶サイズを変えることで容易に発光波長の制御ができる。

ペロブスカイトQDはカドミウム(Cd系)材料より色純度が高く,超高精細テレビ(UHDTV)向けに注目されているが,青色ペロブスカイトQD材料は合成が難しく安定性も悪いため,赤と緑のペロブスカイトQD-LEDに対して良い成果が出ていなかった。

これまでのQD調製法はサブミクロンサイズのコロイド微粒子の標準法を基盤にして,高温からの急速冷却,すなわち物理的条件を変化させるトップダウン的アプローチで合成されてきた。この手法では,サイズおよび構造を揃えることが困難であり,発光輝度および色の純粋さの両法を満たす性能の実現はできなかった。

研究では,原子と分子から組み上げる「自己組織化による精密合成」の概念に基づくボトムアップ手法によって発光波長463nm,半値幅15nm,蛍光量子収率97%を達成した。山形大学と共同で,このQDを用いてQD-LED素子を作製し電流を注入したところ,BT. 2020の色度座標に極めて近い純青発光(464nm)を観察した。

具体的には,臭化鉛(PbBr2),セシウムブロミド(CsBr)またはメチルアンモニウムブロミド(CH3NH3Br),リンゴ酸(MLA),オレイルアンモニウム(OAMH+)を極性溶媒であるジメチルホルムアミド中で室温攪拌することで均一溶液を調製,これを室温の無水トルエンの中に注入するという簡便な操作でQDをほぼ無色の粉末として得ることができる。この粉末の溶液に紫外線を照射したり,発光デバイス構造の中に組み込んで電圧を掛けることで青色発光をさせる。

さらに研究では,単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡(SMART-EM)という独自分析手法を駆使し,ナノ結晶の構造や表面の配位子の位置を,世界で初めて原子レベルの精度で決定し,このQDが64個(4x4x4)のPb原子で構成される一辺約2.5nmの立方体であることがわかった。そのため,95%の純度で同一サイズを形成するという。

このイメージング手法は,今後のQD材料開発のキーテクノロジーになると研究グループではみている。

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