NIMSら,ケイ素を含む有機構造体膜を合成

物質・材料研究機構(NIMS)と分子科学研究所らは,表面合成に新化学反応を導入することにより,通常は炭素だけで構成されるベンゼン環の一部を周期表同族元素のケイ素で置き換えた2次元の共有結合性有機構造体(COF)膜の合成に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

ナノメートルサイズの空孔を持つCOF膜は,電池材料,触媒,更に,小分子の分離など幅の広い応用が期待されている。それらの機能の実現に向け,分子薄膜内の所望の位置に炭素以外の窒素やホウ素などを導入する手法の開発が必要だった。

また,人類が使用できる地球表面部分に存在する元素の中で,重量比で二番目に多いケイ素原子(クラーク数:25.8%)の導入効果に関心が持たれていたものの,ケイ素を導入したCOF膜は実現されていなかった。

これは,周期律表で炭素と同じ14族に分類され最も炭素の特性に近いとされるケイ素が無機化学で扱われ,COF膜合成で利用される有機合成に馴染みのない元素であるという事実も否定できないという。

近年,有機合成した小分子を金属の固体表面上で化学反応させて,炭素薄膜やCOF膜を形成する分子合成技術の開拓が注目されている。今回の成果では,有機合成で小分子にケイ素を導入することなく,金(111)表面上に蒸着したケイ素と小分子を直接反応させる新しい分子合成手法を開発,従来技術では作製できなかった「ケイ素を含むCOF膜(炭素ナノ薄膜)」の合成に成功した。

この新しいCOF膜は一般的な化学合成手法ではなく,金属表面上での化学反応を利用することで達成され,表面合成を利用した新規材料開発の可能性を示す結果となった。

開発した合成手法を応用すれば,より重い同族元素であるゲルマニウムやスズを含む炭素薄膜の合成も可能となり,炭素と同じ14族元素を含む多様な炭素ナノ薄膜の物性解明も進むとする。研究グループは,多様な炭素ナノ薄膜を次世代ナノエレクトロニクスで活用すべく,所望の特性を付与する表面合成技術への展開を目指すとしている。

その他関連ニュース

  • 筑波大ら,円偏光活性をもつらせん導電性高分子合成 2024年02月22日
  • 京大,光エネルギーでハロゲン化アルキルを合成 2024年02月02日
  • 東工大ら,大面積に塗布可能な新規超分子液晶を作製 2024年01月24日
  • 名大ら,液晶の中にナノの孔を形成できることを実証 2023年12月18日
  • 静岡大,植物内/太陽光下で安定な植物ホルモン開発 2023年12月15日
  • 神大ら,含水溶液中での疎水性物質の集合状態を観察
    神大ら,含水溶液中での疎水性物質の集合状態を観察 2023年12月15日
  • 愛媛大,有機伝導体の分子配列と電子構造を精密制御 2023年12月07日
  • 北里大ら,分裂して変色するホモキラル二量体を合成 2023年11月15日