東大,量子コンピューターで強レーザー場を計算

東京大学の研究グループは,強レーザー場によって駆動される窒素分子イオンの電子波束を,変分量子回路で表現し,その時間発展を計算した(ニュースリリース)。

量子系の時間発展のシミュレーションは,量子計算を適用できる重要な問題の一つ。時間発展のシミュレーションを,最も単純な量子アルゴリズムで行なうと,シミュレーション時間の増加とともに量子回路が長くなり,現在利用可能な量子コンピューターではノイズの影響が大きくなり過ぎるため,計算結果を正しく得ることが難しい。

そのため,「如何に効率の良い,短い量子回路を構築するか」という問題と,「その量子回路を用いて計算した結果に含まれるエラーを如何に補正して,より正しい値を予測するか」という問題に指針を与えることが喫緊の課題となっていた。

研究グループは,「Qubit による応用量子化学(AQUABIT)」プロジェクトを推進し,「分子系の計算を量子コンピューターによって行なうための方法論の開発」と「量子コンピューターによる計算結果の誤り抑制による計算確度の向上」に取り組んできた。

今回の研究は,その一環として,強レーザー場によって駆動される窒素分子イオンの電子波束の時間発展を,量子コンピューターibm_kawasakiによって計算した。量子回路を少数の変分パラメーターを用いて構成し,変分パラメーターが満たすべき方程式を構築するために必要な期待値の計算を量子コンピューターによって行なった。

そして,古典コンピューターを用いて効率よく計算することができる特殊な量子回路を用いて,量子コンピューターのノイズによるエラーを見積もり,誤り抑制を行なうことによって,時間発展を定性的に再現できることを示した。

キーワード:

関連記事

  • 浜松ホトニクス、世界最高クラスの2.0kWレーザーダイオードバーを開発

    浜松ホトニクスは、幅1cmのレーザーダイオード(LD)バーから室温で2.0kWの擬似連続波(QCW)出力を実現したと発表した(ニュースリリース)。同社によると、これは世界最高クラスの出力記録となるとしている。 LDバーは…

    2026.06.12
  • 阪大、メガワット級レーザーで3,000超の光渦同時生成に成功 大規模光制御技術に道

    大阪大学レーザー科学研究所・准教授の中田芳樹氏らの研究グループは、光の波面が渦状に進む「光渦」を3,070個同時に整列させた大規模光渦アレイを、メガワット級の高出力で生成したと発表した(ニュースリリース)。 光渦は軌道角…

    2026.04.28
  • 阪大など、ナノダイヤモンドの高圧選別に成功 高感度センサーへの応用に期待 

    大阪大学、ダイセル、立命館大学は、欲しい波長で光るナノダイヤモンドだけを光の圧力(光圧)で選別することに初めて成功した(ニュースリリース)。 ダイヤモンドの色中心と呼ばれる構造が注目されている。これは透明なダイヤモンドに…

    2026.04.03
  • 東大、量子状態が分からなくても取り出せるエネルギーを評価

    東京大学の研究グループは、物質の最小の構成要素である量子に対して成り立つ熱力学の枠組みで、与えられた量子状態の詳細に一切依存せず、最適な仕事の取り出し性能を達成する単一の熱力学的な操作が存在することを証明した(ニュースリ…

    2026.03.05
  • 理研と東京大、光量子コンピュータの誤り耐性を証明

    理化学研究所と東京大学は、光を用いた量子コンピューターで「誤りに強い計算」が可能であることを示した(ニュースリリース)。 量子コンピューターを実現するためのハードウェアとして、さまざまな物理系が候補に挙がっているが、光は…

    2026.02.27

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア