東京大学の研究グループは,静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用できることを見出し,トポロジカル欠陥の動きを3次元で捉えることに成功した(ニュースリリース)。
ネマチック液晶と呼ばれる典型的なタイプの液晶は,細長い分子で構成され,分子の向きを互いに揃える配向秩序を持つ。ところが,系全体で必ず分子の向きが揃うわけではなく,配向の整合しない特殊な領域が現れることがあり,これをトポロジカル欠陥と呼ぶ。
液晶で見られる「ひも」状のトポロジカル欠陥は,ジェットコースターのレールのように3次元的に曲がりくねったり,相互作用して動き回ったりする。このようトポロジカル欠陥のふるまいは,理学・工学両面から興味を持たれてきたが,その3次元構造を直接観測することは容易ではなかった。
今回研究グループは,静止した欠陥への蛍光色素の集積現象を運動観察に応用し,蛍光色素をトポロジカル欠陥のラベルとして利用することで,その3次元運動を共焦点顕微鏡で直接観測することに成功した。
液晶に高電圧をかけて乱れた流れを起こすことで生成したトポロジカル欠陥が,電圧を切った後に動き回りながら次第に消えていく様子を観測した。また今回の観測で,再結合やループ縮小・消滅といった線欠陥に特有の現象を捉えることに成功した。平行に近づくタイプの再結合に着目してより詳しい解析を行なったところ,2次元欠陥の運動と共通する性質と異なる性質の両方が明らかになった。
トポロジカル欠陥の概念は液晶に限られたものではないが,同様の議論は液晶以外のトポロジカル欠陥でも成り立つと考えられるという。研究グループはこの「自発的対称性の回復」メカニズムには,液晶を超えた一般性があると期待している。