理科大ら,放熱に適した伝熱異方性フィルムを開発

東京理科大学,大分工業高等専門学校,東京工芸大学は,セルロースナノファイバー製フィルム中で炭素繊維を配向させることで高い面内伝熱異方性を持つ複合フィルムを開発し,近接する複数熱源の間に生じる熱干渉を緩和しながら,別方向への熱拡散によって放熱することを確かめた(ニュースリリース)。

薄型の電子デバイスでは,素子同士が近接する熱源間の熱干渉を抑制し,拡散によって別の方向に冷却するために,面内伝熱異方性の大きなフィルムの開発が重要となる。研究グループは,バイオマス由来のセルロースナノファイバー(CNF)フィルムがガラスやプラスチックより高い熱伝導性を示すことを見出していたが,CNF単独ではフィルム材料に高い面内伝熱異方性を発現することが困難だった。

CNFの利点として,水系での取り扱いが容易であり,乾燥すると自己凝集してフィルム(紙)になるという特性がある。加えて,セルロースは炭素材料との親和性が高く,高熱伝導性で構造異方性の大きな炭素繊維(CF)フィラーと組み合わせやすい。

疎水性のCFは単独では水中に分散出来ないが,CNF存在下では簡単に分散することがわかった。そこで研究グループは,CNFとCFの水系混合物を開始材料とし,液相3Dパターニング技術によりCFを整列させて面内異方性の高い複合フィルムを形成を考えた。

さらにCFは,セルロースよりも熱分解温度が高いため,CF/CNF複合材料を両者の熱分解温度の中間温度で熱処理することでCFを単離,新たな伝熱フィラーとして再利用できることが期待できる。

研究ではまず,CFの短繊維(セルロースに対して配合比10重量%)とマボヤの殻由来のCNFの水系懸濁液を用いて液体3Dパターニング処理を行ない,CFを一軸配向させたCF/CNF複合フィルムを作製。フィルム面内の熱伝導率異方性は,CF配向方向に7.8W/mK,面内直行方向に1.8W/mK,面内異方性が433%と,これまでの2次元フィルム材料における最大値を示した。

この配向CF/CNF複合フィルム上に分散型EL素子を形成して発光時の温度上昇を調べたところ,ランダムなCF/CNF複合フィルム上に比べて冷却効果が高いことが判明した。

また,近接した2つの熱源を擬似的に形成し,フィルムの温度分布を調査した結果,配向CF/CNF複合フィルムは熱源間を断熱して熱干渉を防ぐと同時に,CFの配向方向への熱拡散により高い放熱性能を発揮した。さらに,450℃での熱処理により複合フィルムからCFを抽出し,再度熱伝導性フィラーとして再利用可能なことも実証した。

研究グループはこれらの結果は,二次元フィルムの多様な放熱パターンの設計と持続的な利用を可能にする一歩だとしている。

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