自治医科大学,名古屋大学,大阪大学,岡山大学は,赤色蛍光タンパク質依存的に組み換え酵素活性を発揮するCreリコンビナーゼ(Cre-DOR: Cre recombinase dependent on RFP)の開発に成功した(ニュースリリース)。
近年,神経科学分野では行動を制御する神経機構の解明について大きな進捗がみられるが,その多くは特定の神経細胞に限定した活動記録・活動操作を利用している。こうした細胞特異的な遺伝子発現制御を実現するため,loxP配列と呼ばれるDNA配列を特異的に認識するDNA組換え酵素Creリコンビナーゼが広く用いられている。
Cre-DORはRFP特異的に結合するナノボディを利用したSplit-Creの再会合により,その組み換え酵素活性を発揮する。また,Cre-DORを用いたRFP発現細胞特異的な順行性トレーシングにより,ラットの扁桃体内側核後背部に存在するガストリン放出ペプチド受容体発現ニューロンが,分界上床核に投射していることが明らかになった。
この研究成果により,赤色蛍光タンパク質を発現する遺伝子改変動物における遺伝子発現制御の選択肢が大きく広がることが期待されるという。
なお,この研究は赤色蛍光タンパク質を標的とした遺伝子改変技術の開発だったが,今後の発展としては内在性のタンパク質を標的とすることが考えられるという。これらの内容は公益財団法人栃木県産業振興センターの「世界一を目指す研究開発助成事業」に採択され,現在開発中だとしている。