立命大ら,パワー半導体の開発とバンドギャップ制御

立命館大学,京都大学,東京都立産業技術研究センター,立命館大学は,次世代パワー半導体材料として注目されているルチル型GeO2(r-GeO2)を中心としたルチル型酸化物半導体混晶系を新たに提案するとともに,実験と計算からのこの系の有用性を実証した(ニュースリリース)。

ワイドバンドギャップ(UWBG)半導体は,極めて大きな絶縁破壊電界値を持つことから,低損失かつ高耐圧のパワーデバイスを実現する次世代半導体材料として期待されている。

一方,従来のUWBG半導体では,基板が高価であること,pn両型伝導の制御が困難なことなどが障壁となっている。その中で昨今,新規UWBG半導体としてルチル型構造のGeO2(r-GeO2)が,大きな注目を集めている。

その理由として,r-GeO2が,①β-Ga2O3と同程度の大きなバンドギャップ(4.7eV)を有すること,②pn両型伝導の可能性ならびに高い電子/正孔移動度が理論的に予測されていること,③β-Ga2O3を超える熱伝導率を有すること,④安価な手法でバルク結晶が合成可能であることなどから,パワーデバイス応用を目指したr-GeO2の研究が加速している。

研究ではまず,ヘテロ接合デバイスなどさらなる幅広いパワーデバイス応用を見据え,r-GeO2を中心とした新たな混晶系(GeO2-SnO2-SiO2)を提案した。それと同時に,この混晶系の有用性を実験と理論の両面から実証することを目指した。

ミスト化学気相成長(ミストCVD)法を用いた全組成範囲におけるrGexSn1-xO2薄膜の合成と物性の解析を行ない,組成の変化によって格子定数およびバンドギャップを変調できること,r-GexSn1-xO2混晶薄膜の各組成における格子定数とバンドギャップの値が,後述する第一原理計算から算出した値ならびに傾向と一致することを確認した。

加えて,0≤x≤0.57(x:薄膜内のGe組成)におけるn型伝導性を実証した。続いて,理論的な手法として,第一原理計算を用いてr-GexSn1-xO2,r-GexSi1-xO2混晶のバンドアライメント解析を行なった。

r-GexSn1-xO2ではGe組成の増加,r-GexSi1-xO2混晶ではSi組成の増加によるバンドギャップの増大が予測された。さらに,各組成における伝導帯と価電子帯の挙動から,r-GeO2ならびにGe含有量の高い組成のr-GexSn1-xO2におけるp型ドーピングの可能性,また,r-SiO2ならびにSi含有量の高い組成のr-GexSi1-xO2の障壁層としての有用性が示唆された。

研究グループは今後,r-GeO2をはじめとするルチル型酸化物半導体に関する研究・開発のさらなる発展が期待されるとしている。

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