東大ら,細胞内でリン光を発する金ナノクラスター

東京大学,分子科学研究所,東京工業大学は,含窒素複素環状カルベン(NHC)配位子を用いた炭素中心金銀(CAuI6AgI2)クラスターを設計・合成し,この分子が溶液中で強いリン光を発光することを見出し,NHC配位子がリン光発光に寄与することを理論計算により明らかにした(ニュースリリース)。

金ナノクラスター分子は,多様な分子構造や電子構造をとり,発光性や触媒機能を活用した機能性クラスターの開発が進められている。研究では,独自に開発したNHC配位子で保護した炭素原子を中心元素とする六核の金(I)クラスターを基に再設計・合成を行ない,フォトルミネッセンスの高効率化と光バイオ分析への応用を目指した。

クラスターの構造安定化と電子構造の制御を目的として2つの金属に結合できる配位子を用いたCAuI6AgI2クラスターを設計し,このクラスター分子の構造が溶液中でも安定に維持されることを確認した。

中でもベンズイミダゾリデン型配位子を用いた金銀クラスターは,固体状態のみならず,溶液中においても560nm付近に発光極大を有する黄色のフォトルミネッセンスを示し,その発光量子収率は最大で88%に達した。また,発光寿命は有機溶媒中で1マイクロ秒以上あり,発光メカニズムはリン光と示唆された。

NHC配位子の代わりにホスフィン配位子を用いた金銀クラスターと比較すると発光寿命は同程度だが,発光量子収率はNHC配位子を用いた金銀クラスターの方が著しく高く,NHC配位子の有用性が示された。

この金銀クラスターが溶液中でも高い発光量子収率でリン光発光を示したことにより,細胞イメージングへの応用を検討したところ,DMSO/PBS溶液で10分間インキュベートすることでさまざまな培養細胞に導入することに成功した。

細胞内に取り込まれた金銀クラスターは発光性を保持しており,共焦点顕微鏡下で405nmレーザー光で励起し500–550nmの発光を検出することで細胞内局在を可視化できた。細胞内に取り込まれた金銀ナノクラスターは小胞体に選択的に集積した。

細胞内取込みはGenistein処理で阻害され,細胞内の取込み経路や集積させる細胞小器官を自在に制御できる可能性が示された。

この金銀ナノクラスターは,蛍光と比較して発光寿命の長いリン光を測定するため,バックグラウンドの蛍光を抑えたイメージングが可能になるとする。さらに,細胞内に取り込まれた金銀ナノクラスターは発光寿命が100–200nsと比較的長く,自家蛍光シグナルを抑えたイメージングも可能と確認した。

研究グループはこの成果が,光バイオ分析のための新たな物質群と基礎技術を提供するものだとしている。

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