東大ら,赤色矮星の短時間閃光現象を検出

東京大学,上海交通大学,東北大学らは,約5700個の赤色矮星に対し,カメラ「トモエゴゼン」で秒刻みの高速モニター観測を実施し,赤色矮星からの数10秒以下の短時間に激しく増光するフレアを合計22件検出した(ニュースリリース)。

恒星フレアとは恒星表面で発生する突発的な爆発現象で,発生するタイミングや強度などを前もって予想することが難しいことから,これまでその瞬間をとらえることが困難だった。

近年,宇宙望遠鏡などによる大規模なサーベイ観測により多数の恒星フレアが検出され,その発生メカニズムの理解は劇的に進展したが,これまでのサーベイ観測では数10秒から数10分程度刻みの動画しか取得できなかったため,数秒から数10秒の短期間に劇的に増光するフレアの検出は難しく,短時間フレアの基本的な特性ですら未解明だった。

そこで研究グループは,秒刻みで広視野の動画撮像が可能な東京大学木曽シュミット105cm望遠鏡に搭載されたトモエゴゼンを用い,赤色矮星からの短時間フレアの探索を実施した。トモエゴゼンはおおよそ数100個の赤色矮星を一度に観測することができる。

そこで研究では2019年から2020年にトモエゴゼンで取得したデータのうち,フレア探索に適した40時間分の観測データを解析し,総計約5700個の赤色矮星の明るさの短時間変動を調べ,22件の短時間かつ強力なフレアを検出した。

検出されたフレアは数秒から数10秒の短時間のうちに通常時の明るさに比べ数割から最大で20倍程度の増光を示した。これらは,これまでに検出された赤色矮星が起こす恒星フレアの中で最も短時間の増光現象であり,非常に強力な磁場によるエネルギー解放が発生していることが示唆される。

また,他の望遠鏡で取得されたデータを用いて,今回フレアを検出した赤色矮星のスペクトルや回転周期を調べた結果,分光データが存在する11天体中10天体のスペクトルに強い活動性を示す輝線を確認した。

これは今回検出された短時間フレアが活動的な恒星にて発生しやすいことを示唆する。検出された短時間フレアの全てが活動的な恒星で発生すると仮定すると,おおよそ1日に1回程度の頻度で発生していることになり,短時間フレアが活動的な赤色矮星で日常的に発生している可能性を示唆する。

研究グループは,この短時間フレアの一連の光度変動を説明するため,磁気リコネクションによる大量のエネルギー解放によって恒星大気が強烈に熱せられそこから光が漏れでてくるというシナリオを提案し,観測された光度変動と矛盾がないことを示した。

この成果は系外惑星における生命居住性の議論にも影響を及ぼし得るもの。研究グループは今後,トモエゴゼンによって,フレアを始めとする未知なる秒変動を引き続き探索していくとしている。

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