国がんら,早期大腸がんにESDの有効性を確認

がん研究センター(国がん),中央病院,NTT東日本関東病院らは,転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対し,内視鏡治療で電気メスを用い病変を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行なった1,883人(1,965病変)の患者の5年の全生存率,疾患特異的生存率,腸管温存率などを国内20施設との前向きコホート研究で調査し,いずれも良好な治療結果が得られることを確認した(ニュースリリース)。

ESDは,国立がん研究センターによる内視鏡用の高周波ナイフ(ITナイフ)の開発や手技の確立により開発された治療方法で,2006年4月に早期胃がんの内視鏡治療として保険適用された。

その後,早期大腸がんでの応用も進み,2012年4月には保険適用となり,全国に普及した。これまで,安全性や治療効果についての研究報告が積み上げられているが,より長期的かつ大規模な報告が待たれていた。

また大腸がんは日本では最も,また世界的にも頻度が高い一方で早期治療による生存率が高いため,早期発見と患者の負担が少ない治療が求められている。

研究の短期観察では,病変を分割せず切除することで取り残しを回避する一括切除の割合と,有害事象の発生率を調査した。その結果,一括切除割合は97%で,病理学的に追加手術が必要ないと判断された(治癒切除)割合は91%だった。

有害事象では,腸に穴が開く穿孔せんこうを2.9%,術後出血を2.6%に認めたが多くが腸管を切除せず保存的な加療での対処が可能だった。また,0.5%で穿孔・出血のために外科手術が必要となった。

長期観察の結果,5年の全生存率は93.6%,疾患特異的生存率は99.6%,腸管温存率は88.6%で,治癒切除が得られた場合の腸管温存率は98%と非常に高い割合だった。また,治癒切除後の局所再発は0.5%(8例)で認めたが,全例で内視鏡による追加治療が可能だった。一方で,異時性大腸がんは1%(15例)で認められ,13例で手術が施行された。

研究において,2cm以上の早期大腸がんに対しESDを行なった場合,高い割合で治癒切除が可能であり,長期的にもその状態が維持されることが明らかとなった。また,安全性やQOLの観点からも優れていることが示された。

また,大腸ESDで治癒切除が得られた場合は,局所再発だけでなく異時性大腸がんの発生に注意する必要が示唆され,術後の定期的な経過観察の必要性が明らかとなった。研究グループはこの結果を踏まえ,今後は世界的にもESDが標準治療となり,大腸がんの早期発見・治療による術後の患者のQOLと生存率の向上が期待されるとしている。

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