名大ら,がんの診断と治療が可能なナノ粒子を開発

名古屋大学と量子科学技術研究開発機構(QST)は,悪性腫瘍(がん)の蛍光/磁性バイモーダルイメージング診断と光温熱治療法/化学力学的治療法を可能とする超多機能性Gd2O3/CuSナノ粒子(BCGCR)の開発に成功した(ニュースリリース)。

研究で取り組んだ化学力学的治療法(CDT)は,連続的な化学プロセスにより内因性過酸化水素(H2O2)を細胞毒性があるヒドロキシラジカル(・OH)に変換するメカニズムで,がん治療の新たな効果的手法として強く期待されている。

この方法は,細胞のエネルギー代謝の過程で発生するH2O2を非常に毒性の高い活性酸素種(ROS)に変換することで,がん細胞を死滅させる。しかし,これまでのCDTは低酸素腫瘍微小環境(TME)が酸性であり,かつ,正常細胞と比較してH2O2産生も乏しいため,フェントン反応に基づくROS生成が大きく抑制される問題があった。

銅カルコゲニドは,この目的に適した無機ナノ材料として注目を集めている。特に,p型半導体の光増感剤の一種であるCuSナノ粒子は有力で,幅広い近赤外線(NIR)吸光度,高い光熱変換効率,優れた光安定性を備える。

NIRレーザー照射下で局所的に熱を発生させることで,熱による死滅効果を示すため,CuSナノ粒子においては,レーザー照射により誘導される光温熱治療(PTT)効果がフェントン反応を促進し,ROS生成を加速することで,極めて効果的な化学力学的治療(CDT)が実現できる。つまり,ナノ粒子を介した相乗的なPTT/CDTによる新規複合的治療法が期待される。

そこで研究では,室温での単純なワンポット合成法による磁性酸化ガドリニウム(Gd2O3)とCuSナノ粒子の同時合成に取り組み,蛍光/磁性バイモーダルイメージング診断とNIR照射によるPTT,及び効果を増強したCDTを同時に可能とする超多機能性Gd2O3/CuSナノ粒子(BCGCR)の開発に取り組んだ。

開発したBCGCRは,静脈内投与後に悪性腫瘍(がん)に到達し,その後,がん細胞によるエンドサイトーシス機構によって細胞内に取り込まれる。実験の結果,BCGCR投与群はナノ粒子の集積効率が有意に高いことが明らかになった。さらに,BCGCR投与群では,近赤外線(IR)レーザー照射により腫瘍成長が大きく抑制され,投与15日目には,腫瘍はほとんど消失した。

研究グループは今後,神経膠腫(悪性脳腫瘍の一種)以外の進行がんに対する治療効果の検証,抗がん剤との併用療法の可能性,及び製剤化検討も含めた臨床応用への展開が強く期待されるとしている。

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