順天堂大,高精度光線-電子相関顕微鏡法高感度化

順天堂大学の研究グループは,近接依存性標識法を高精度光線-電子相関顕微鏡法に応用し,蛍光シグナル強度の大幅な向上および蛍光シグナルの長期安定化に初めて成功した(ニュースリリース)。

高精度光線-電子相関顕微鏡法(In-resin CLEM)とは,樹脂包埋試料から100nm厚の超薄切片を作製し,同一の薄切試料から蛍光顕微鏡による蛍光シグナル情報と電子顕微鏡による超微形態情報を相関させるイメージング手法。

研究グループはこれまでこの手法に利用可能な蛍光タンパク質を見出してきた。特に,電子顕微鏡用のエポキシ樹脂包埋試料中で最も明るい蛍光が観察されるmCherry2では,緑色蛍光タンパク質mEGFPの約90倍の蛍光が観察できるが,1−2週間程度でほとんど消失してしまうため,より強い蛍光シグナルが安定的に得られる方法が待たれていた。

通常,電子顕微鏡による超微形態解析においては,エポキシ樹脂を用いて試料を作製する。エポキシ樹脂包埋過程では,グルタルアルデヒドを含む固定液,生体膜を可視化するのに必要なオスミウム酸染色,エタノールによる脱水処理,それに続くエポキシ樹脂の重合反応を行なうが,エポキシ樹脂包埋試料中では,ほとんどの蛍光色素の蛍光が消失してしまうと言われてきた。

研究グループは,エポキシ樹脂包埋過程でも蛍光が消失しない蛍光色素DyLight549を見出し,近接依存性標識法を応用して,エポキシ樹脂包埋試料において蛍光色素による標識法を確立した。近接依存性標識法とは,目的タンパク質の近傍にあるタンパク質の標識を可能にする方法。

研究では,ビオチン化酵素を近接依存性標識酵素として利用した。このビオチン化酵素を発現した培養細胞の培地中にビオチンを添加すると,ビオチン化酵素自身および,近傍にあるタンパク質がビオチン修飾される。ビオチン化されたタンパク質は,蛍光色素DyLight549を標識したストレプトアビジンで検出できる。

そして,多くの蛍光色素の蛍光が消失するオスミウム酸染色とエタノール脱水処理を行なったところ,DyLight549は約22%の蛍光を保持していた。これは蛍光タンパク質mCherry2の約14倍の強度であり,mCherry2の蛍光がほとんど消失する14日後でも約75%の蛍光を保持していた。

次にミトコンドリア局在ビオチン化酵素を発現させた細胞試料の超薄切片では,蛍光シグナルがミトコンドリア様に認められ,電子顕微鏡解析から蛍光シグナル部分にミトコンドリアの超微形態が観察できた。

研究グループは今後,神経疾患モデルマウスの中枢神経組織の超微形態変化について高精度光線-電子相関顕微鏡法解析を展開し,病態変化・病態解明の研究を行なうとしている。

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