公大ら,量子乱流中における量子渦拡散の法則解明

大阪公立大学,慶應義塾大学は,米フロリダ州立大学は,絶対零度(−273℃)に近い極低温で超流動状態となった液体ヘリウム4(4He)における量子乱流中の量子渦の拡散に法則があることを明らかにした(ニュースリリース)。

コーヒーにミルクを注ぎ,スプーンでかき混ぜる(すなわち乱流を発生させる)と,ミルクはあっという間に混ざって広がる。これは,乱流が流体中の粒子を素早く拡散する能力を持っていることを意味する。

このように拡散現象は身の回りにありふれているが,この世界のさまざまなところ(冷却原子気体の超流動,中性子星,ダークマター等)において出現し得る量子乱流は,量子渦の可視化実験により,量子乱流中の量子渦は短い時間の中では“超拡散”となり,さらに長い時間では“常拡散”に転移することが発見されている。そこで,研究グループは理論と数値計算によりこの法則を調べ,その背景にある物理の解明を目指した。

研究では,超流動液体ヘリウムの量子乱流をコンピュータでシミュレーションし,量子渦に追随する粒子を入れ,その軌跡を解析した。まず絶対零度の量子乱流を計算し,量子渦が短い時間において確かに“超拡散”に従うことを明らかにした。また,長い時間においては,量子渦同士がぶつかって再結合が起こることにより拡散が遅くなり,“常拡散”に転移することを明らかにした。

シミュレーションで得られた“超拡散”の指数は,可視化実験結果と一致し,さらに,絶対零度から約2K(-271℃)まで幅広い温度において計算したところ,“超拡散”の指数はほとんど変化しないことが分かった。すなわち,“超拡散”は温度等のパラメータにあまり依存しない頑強な法則であることが分かった。

この研究は,量子乱流の新しい法則として“超拡散”の物理を明らかにしたもの。この法則は,複雑な量子乱流を理解するための新しい道となる可能性があるという。また,超流動の乱流拡散を理解するための基本的な知見を構築した。研究グループは,得られた知見について,他の量子系における拡散の研究につながることが期待されるとしている。

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