金沢工業大学の研究グループは,太陽光発電・蓄電システムの導入量や導入コストなどをパラメーターとするネットゼロエネルギーハウス(ZEH)の経済性評価シミュレーターを開発した(ニュースリリース)。
日本では,2009年11月から開始された固定価格買取制度(FIT)をきっかけに再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいる。
FITは再生可能エネルギーによって発電された電気を電力会社が国の定める価格で一定期間買い取ることを義務付けた制度。この中でも10kW未満の住宅用太陽光発電については,自家消費した後の余剰電力が10年間買取対象となっていたが,2019年11月から順次満了しており,2023年には累計165万件(670万kW)が満了を迎え,余剰電力の使い道が課題となっている。
日中に発電した太陽光発電の電気を夜間など効果的に利用するためには,蓄電池が重要な役割を果たす。また,エネルギーを効率的に利用するためには,断熱性能の向上や省エネ化が重要となる。
この3つの特長を持ち,1次エネルギー消費量がゼロを目指す住宅「ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)」では,経済性と環境性を兼ねたZEH型の住宅が注目されている。一方で,ZEH化に向けては電力関連機器と電力料金,電力の融通などが相まって複雑化しており,利用者の判断基準が分かりにくいという現状がある。
開発したシミュレーターは,太陽光発電・蓄電システムの導入量・コストなどをパラメーターとして家庭ごとに設定可能とし,一般住宅がZEH化に向けて機器を導入したときの経済性や環境性の評価を短期間に試算,家庭内での電力融通を行なうことによる評価を行なっている。
また,家庭ごとに北陸地方での季節消費量を加味した電力消費量,太陽光発電の出力容量,蓄電システムの蓄電容量,システム導入コストなどを設定して,シミュレーション試算を行なっている。
研究グループは,石川日産自動車販売との連携により,家庭にBEVを導入した場合もシミュレーションができるようにシミュレーターを改良した。家庭で太陽光発電を選択した場合や,ガソリン車からBEVに変更した場合の,経済性・環境性評価について容易に試算できるようになり,石川日産自動車販売はこのシミュレーターを用いて,顧客が家庭にBEVを導入する際の試算に活用するとしている。