愛媛大ら,SiO2液体・ガラスの特異な物性を解明

愛媛大学,高輝度光科学研究センター,山梨大学,理化学研究所は,大型放射光施設SPring-8の高強度の高エネルギーX線を活用することでSiO2ガラスの高圧下における構造変化の解明に成功した(ニュースリリース)。

四面体構造を持つ液体・非晶質物質は,高温もしくは高圧環境下において異常な特性を持つことが知られており,その構造的起源の理解は,多くの科学分野において重要な課題とされている。

特に,水の特異な物性は最も有名な例であり,4℃における密度の最大化や加圧時の粘性低下などは特異な性質として広く知られている。SiO2液体やSiO2ガラスにおいても,高温下での密度の最大化や加圧時の粘性低下,高圧下における圧縮の最大化などの異常特性が知られており,そのメカニズムは重要な未解明問題となっている。

水における異常特性の構造的起源として二状態仮説が幅広く研究されている。二状態仮説では,水の状態を2種類の局所構造の混合状態と仮定し,水の液体構造に潜む四面体構造の割合の温度・圧力による変化が異常特性に重要な役割を果たしていることが提唱されている。

さらに,水と同様に,SiO2においても二状態構造的記述が可能であることが理論研究により示され,S状態と呼ばれる四面体性の高い構造の割合の変化がSiO2液体の異常特性を制御するパラメーターであることが提案されている。しかし,SiO2液体もしくはSiO2ガラスに潜む四面体構造やその高圧下における変化についての実験的な証拠はこれまで見つかっていなかった。

研究では,大型放射光施設SPring-8のBL37XU,並びに高エネルギーX線利用のテストベンチとして整備されたBL05XUにおいて,高強度の高エネルギーX線を活用することにより,高圧その場環境下において精確にSiO2ガラスの構造を測定する手法を開発し,高圧下におけるSiO2ガラスの構造情報を得ることに成功した。

理論研究により提案されている構造パラメーターzを用いた解析により,この構造パラメーターzの分布が高圧下において二峰性分布を示すことを確認し,SiO2液体の理論研究において報告されているものと良い一致を示したという。

研究グループは,SiO2ガラスは1気圧から低圧下では四面体性の高いS状態構造から主に成る一方,高圧下では四面体性が崩れ,S状態構造の割合が大きく低下することが,高圧下におけるSiO2ガラスの異常特性の構造的起源となっていると考えられるとしている。

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