KEKら,レーザーで隕石衝突を再現しXFELで観測

著者: sugi

高エネルギー加速器研究機構(KEK),筑波大学,大阪大学,高輝度光科学研究センター,理化学研究所は,X線自由電子レーザー施設SACLAを用いて,鉱物であるジルコンの衝撃特性を超高速X線観察することに成功した(ニュースリリース)。

ジルコン(ZrSiO4)は地球上の岩石から隕石まで広く存在する。微量に含まれるウランは質量数238と235の2つの同位体があり,それぞれが半減期約45億年と約7億年で鉛206と鉛207に変化する。ウランと鉛の量比から経過した時間を正確に求めることができるため,ジルコンは地質学的な「時計」として重要な役割を持つ。

これまでの実験で,温度・圧力条件によって高圧相のレーダイトへ結晶構造が変化することや,酸化物(ZrO2とSiO2)への分解が起こることが分かっている。それらの変化が天然ジルコン中に残す痕跡を観察することで,過去にどういった温度・圧力条件にさらされていたか,例えば,ジルコンがマグマから形成されてから経過した時間や,隕石衝突を受けてから経過した時間などを知ることができる。

これまでの実験では,長時間高温高圧にさらされた状態のジルコンが観察されてきた。しかし,隕石衝突による衝撃で高温高圧になるのは一瞬だけであるため,衝撃下での結晶構造変化,分解などのダイナミクスは実験による再現でも観察することが難しく,明らかになっていなかった。

そこで研究グループは,SACLAにおいて,一瞬だけ衝撃を受けたジルコンの結晶構造を詳細に観察した。この手法では,高強度レーザーパルスを試料に照射することで衝撃波を発生させ,衝撃前,衝撃を受けている瞬間,さらに衝撃から解放されるまでの結晶構造変化を強いX線パルスを照射して撮影する。

縦横5mm,厚さ50μmのジルコン焼結体試料に高強度レーザーパルスを時間幅5ナノ秒で照射し,同時にSACLAのX線パルスを照射してX線回折像を得た。X線回折スペクトルは結晶構造を反映し,そのパターンから結晶構造を知ることができる。

その結果,レーザー衝撃過程ではレーダイトへの相転移は見られたが,分解は見られなかった。この結果はこれまでの長時間高温高圧状態でおこなわれた実験の結果とは異なり,一瞬の衝撃で分解は起こりにくいと考えられるという。

鉱物の非常に短い時間に起こる現象を詳細にとらえる事で,時間も結晶構造変化の要因になっていることが分かってきた。研究グループは今後,様々な時間スケールで温度圧力を変化させた時の結晶構造変化を解明し,過去に起こった隕石衝突の正確な規模の推定に役立つデータを得たいとしている。

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