琉球大ら,細菌を瞬間加速する光応答性蛋白質発見

琉球大学,東北大学,国立感染症研究所,九州工業大学,千葉科学大学<福岡大学は,光を受けた直後に遊泳を急加速する土壌細菌を発見した(ニュースリリース)。

持続可能な自然エネルギーの代表である太陽光は,視覚や光合成など,生物の機能にとって欠かせない存在。光を受けて活性化することによりイオン輸送などを行なう蛋白質は,光応答性蛋白質と呼ばれ,その遺伝子を神経細胞などに組み込むことで,光によって細胞機能を局部的に操作する光遺伝学で注目されている。

研究グループは,岐阜県の土壌から分離され,2019年に新種として提唱されたLeptospira kobayashii(レプトスピラ・コバヤシイ)が,光を受けた直後に遊泳を急加速することを発見した。レプトスピラ属は,螺旋形の菌体の内部に2本のべん毛を持つ運動性細菌のグループ。

光応答性を担う遺伝子を特定するため,ゲノム全体を対象とした網羅的遺伝子探索を行ない,特定した光応答性を担う遺伝子を調べたところ,ヒトを含む多様な生物が細胞応答調節に利用するサイクリックAMP(cAMP)を作り出す酵素の遺伝子だった。

光で活性化してcAMPを作る酵素は,真核生物であるミドリムシで初めて見つかった。原核生物である細菌の運動を一瞬で加速する光活性型cAMP合成酵素の発見は今回が初めてだという。

cAMPが遺伝子発現を介して微生物運動に関わることは知られているが,レプトスピラ・コバヤシイのように秒単位で光に応答して運動パターンを変化させる例はこれまでになかった。べん毛を利用した運動は細菌の生存や病原性に関わることから,世界中で研究されており,べん毛回転を制御する様々な因子が調べられているが,cAMP がべん毛回転を制御することを示したのはこの研究が初めて。

さらに,レプトスピラ属以外にも,多くの微生物種がlprA遺伝子の相同遺伝子を持っていることも分かった。LprAが関わるシグナル伝達には未だ明らかでない部分があるが,この成果は,新しい細胞内シグナル経路の発見につながることが期待されるという。

cAMPは蛋白質のリン酸化に関わるなど,細胞機能に欠かせないシグナル媒介物質。研究グループは,新しい光活性型cAMP合成酵素の発見は,光遺伝学の新材料開発につながることが期待されるとしている。

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