理科大,光遺伝学的手法により抗不安作用を解明

東京理科大学の研究グループは,最新の光遺伝学的手法と行動実験を組み合わせて,KNT-127は内側前頭前野の亜核から扁桃体に投射しているグルタミン酸神経回路を抑制することで,オピオイドδ受容体を介した抗不安作用を示すことを明らかにした(ニュースリリース)。

うつ病や不安障害などの精神疾患を治療するため,既存薬とは異なる作用機序を持つ向精神薬の開発が切望されている。これまで研究グループは,オピオイドδ受容体作動薬KNT-127が向精神薬として有望であることを明らかにし,その作用機序解明を目指した研究に取り組んできた。しかしながら,未だにその全容は明らかになっていない。

研究グループは,生後4週の雄C57BL/6JマウスのPLに,黄色蛍光タンパク質を導入したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV2-CaMKIIa-ChR2[H134R]-EYFP)を投与して,チャネルロドプシン2(ChR2)という光感受性チャネルの発現を誘導した。

そして,光遺伝学的手法によりPL-BLA経路を刺激するために,ワイヤレスの光刺激装置に接続された光ファイバーカニューレをBLAに埋め込んだ。デジタルパルスを与えて埋め込んだLEDを作動させて光刺激を与えた後,各行動試験を実施した。

高架式十字迷路試験とオープンフィールド試験で生得的な不安を評価し,文脈的恐怖条件付け試験で学習性の不安を評価した。高架式十字迷路試験では,ChR2群のオープンアーム滞在時間とアームエントリー数は,対照群と比較して有意に減少した。

オープンフィールド試験では,ChR2群の中心に滞在する時間が大きく減少することがわかった。これらは先天性不安が大きいときの挙動と一致しているが,他の活動に大きな差はなかった。すくみ挙動を基に評価した文脈的恐怖条件付け試験では,光刺激中のChR2群と対照群の間で有意差は見られなかった。

また,高架式十字迷路試験において,PL-BLA経路の活性化によって誘発された不安様行動に対するオピオイドδ受容体作動薬KNT-127の効果を調べた。ChR2群にKNT-127を投与すると,オープンアームで過ごす時間が増加することがわかった。

一方,対照群ではKNT-127の投与の有無による有意差はなかった。以上の結果は,KNT-127が特定のPL-BLA経路の光遺伝学的な活性化に起因する生得的な不安様行動を抑制することを示唆している。

研究グループは,この研究成果をさらに発展させることにより,既存薬とは異なる作用機序を有する新規向精神薬の開発が期待されるとしている。

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