KDDI総研ら,4コアで109Tb/sを3120km伝送

KDDI総合研究所,東北大学,住友電気工業,古河電気工業,日本電気(NEC),オプトクエストの6機関は,光海底ケーブルシステムの持続的な大容量化を実現するための基盤技術を確立し,3,000km級の光海底ケーブルシステムにおいて,既存システムの7倍の1.7Pb/a程度まで容量を拡大できる可能性を確認した(ニュースリリース)。

今回研究グループは,以下①~⑤の基盤技術の開発・実証を行なった。

①マルチコアファイバを用いた長距離伝送方式の開発・実証
世界最小級に伝送損失を低減した4コアファイバは,コア間クロストークを抑圧したマルチコアファイバでは世界最小級損失の0.155dB/kmを実現しつつ,-60dB/100km以下の低クロストーク性も確保した。この光ファイバにより,109Tp/sの超大容量光信号を3,120km以上伝送可能であることに加え,56Tb/sの光信号を12,000km以上伝送可能であることを実証した。

②マルチコアファイバを収容した光海底ケーブルの開発
このケーブルは4コアファイバを32心収容でき,最大で128コアによる大容量伝送が可能。実際の利用を想定し水中・長距離の伝送試験を行ない,光ファイバそのものの試験結果と比較して,光信号パワーの減衰量,コア間クロストークなどの光学特性に大きな変化はなく,良好な伝送性能を得ることに成功した。

③マルチコアファイバの特性評価技術の開発
コア数4以上のマルチコアファイバおよびそれを収容した海底ケーブルの光学特性を評価する2つの技術を開発した。第1の波長掃引法では,マルチコアファイバのモード依存損失,クロストークを評価でき,第2のOTDR法では,マルチコアファイバの損失,クロストークの長手分布を評価できる。

④空間多重型高密度光デバイスの開発
4コアファイバ用アイソレータ内蔵Fan-in/Fan-out(ファンイン/ファンアウト)デバイス,4コアファイバ用Fan-out付きTAPモニタデバイス,4コアファイバ用O/E変換器付きTAPモニタデバイスの3種類を開発,複数機能を1デバイスに集約するとともに,世界最高水準の低損失(typ0.4dB)と小型化を同時に実現した。

⑤マルチコア光増幅中継方式の開発・実証
シングルコア光増幅器とFan-in/Fan-outデバイスで構成するマルチコア光増幅器よりも小型なマルチコア光増幅器の開発に成功し,基本的な光増幅動作を実証した。1つのゲインブロックで複数コアを一括して増幅するクラッド励起方式を採用するとともにそのゲインブロックを構成する部品やその配置を工夫することで,体積を従来の半分程度にした。

これらの開発結果を組み合わせ,既存のシステムと比較し7倍となる毎秒1.7ペタビット程度までの容量を拡大できる可能性を確認した。研究グループは,,2020年代半ばの実用化を目指すとしている。

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