東北大学の研究グループは,超省エネルギー相変化メモリ材料の設計に有効な機械学習を用いた自動最適化フレームワークを開発し,データ書き込み時の消費電力を従来の1/100以下にできる可能性を示唆した(ニュースリリース)。
次世代不揮発性メモリの一つとして相変化メモリ(PCRAM)に注目が集まっている。
PCRAMは,データ書き込み時間が数十ナノ秒と高速なことに加え,動作メカニズムが単純で制御しやすいという特長があり,既に量産化されているが,材料の相変化時の消費電力が大きいという課題があり,消費電力を大幅に低下させる新たな相変化材料が期待されている。
そこで研究グループは,新たな相変化材料の開発を加速するために,ベイズ最適化を利用することでPCRAMが超省エネルギーで動作するために必要な材料物性を自動探索するフレームワークを開発し,新規材料の設計指針を構築した。
PCRAMに利用される相変化材料の物性には熱伝導率,電気伝導率等の9つの物性パラメータが存在し,それらを最適に設計する必要があるが,網羅的な数値シミュレーションで最適化を行なうには莫大な時間を要する。
加えて,メモリデバイスの形状や断熱材,電極物性等のパラメータが追加されると莫大な数の材料物性を最適化する必要がある。これを求根アルゴリズムとベイズ最適化を併用した機械学習を用いた探索法により,多数のパラメータを一括に探索し,消費電力を大幅に下げるために鍵となる物性を特定することができるようになった。
これにより,新たな相変化材料の設計指針を明確にした。特に,これまで着目されてこなかった「メモリ材料自体の電気抵抗に対する電極接触抵抗の比」が重要であることを指摘した。
この成果により,現在実用化されている相変化材料であるGe-Sb-Te化合物を用いたメモリの消費電力が大きいのは,材料自体の電気抵抗,材料/電極界面における接触抵抗の比,熱伝導率が大きいことが要因であることを明らかにした。
今回構築した指針に基づくと,現実的に達成しうる物性範囲で消費電力を1/100以下にできる可能性が示されたという。研究グループは今後,この指針に基づき,新規PCRAM用相変化材料を開発する計画。
また,今回開発したベイズ最適化を利用した自動最適化フレームワークを利用することで,相変化材料設計だけでなく,デバイス構造までを含めた包括的な材料設計へと発展させていくとしている。