関学,二次元物質に電流/スピン流を駆動する機構

関西学院大学の研究グループは,二次元物質NbSe2における非線形光学的ホール効果を利用した電流およびスピン流を駆動する新しい機構を理論的に提案した(ニュースリリース)。

グラフェンや新しい二次元物質である遷移金属ダイカルコゲナイド系物質(TMDC)は,熱力学的に安定なだけでなく,透明で機械的に柔らかい素材であるため,光・電子機能を有するフレキシブルデバイスへの応用が期待されている。さらに,グラフェンとは異なりTMDCはスピン軌道相互作用を有しており,スピントロニクス素子への応用が期待されている。

研究では,一から三層までのNbSe2の電子状態を解析した上で,非線形光学的ホール伝導度を数値計算によって解析した。NbSe2はTMDCの一つであり,室温では金属的な性質を示し,低温で超伝導転移を示すことが知られている。

これまで二次元物質では,非線形ホール効果によるスピン流生成には外部からの一軸性歪みを与える必要があった。この研究では,光照射による非線形光学的ホール効果を利用することで,一軸性歪みを与えなくても,二次元物質NbSe2に電流またはスピン流が生成できることがわかった。

具体的には,奇数層NbSe2に,y偏向の光を照射すると,その非線形光学効果によって,スピンホール流が生成された。また,同様に,x偏向の光を照射すると,その非線形光学効果によって,電子ホール流が生成された。これらの結果から,NbSe2に光を照射することで,スピン流または電流を生成することが可能となった。加えて,二層NbSe2であっても,垂直電場を引加することで空間反転対称性を破り,スピン流または電流を光で誘起できることを示した。

また,MoS2などの半導体TMDCでは,非線形ホール効果の誘起には,外部からの一軸性歪みだけでなく,ホールドーピングが必要とされていた。しかし,研究では,半導体TMDCにホールドーピングをすることなく,さらに一軸性歪みを与えなくても,光を照射することによって半導体TMDCに電流またはスピン流が生成できることを明らかにした。

この本研究で明らかになった原理は,NbSe2だけでなく,MoS2などの半導体TMDCなどにも適用できるという。特に,入射光のエネルギーは,可視光領域であるため,エネルギーハーベスティング素子などへの応用も期待される。研究グループは今後,この理論指針にしたがった物質設計およびデバイス設計が期待されるとしている。

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