ノベルクリスタルテクノロジーと佐賀大学は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトにおいて,酸化ガリウムパワーデバイスの大電流化を阻害していた耐圧特性を劣化させる欠陥(キラー欠陥)を従来の1/10に低減させた,第3世代酸化ガリウム100mmエピウエハーを開発した(ニュースリリース)。
炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を材料としたパワーデバイスの開発が進められているが,β-Ga2O3を使うことで,さらに電力損失を小さくできる。また,SiCやGaNより高速な製造手法を用いることができ,低コスト化が期待できる。
ノベルクリスタルテクノロジーはが既に開発している100mmエピウエハーにはデバイスの耐圧特性を劣化させるキラー欠陥が10個/cm2程度存在するため,大型のデバイスを作ることができず,電流値は10A程度に制限されていた。
この課題の解消を目指して,佐賀大学との共同研究により,キラー欠陥の原因が主にエピ成膜中に発生する特定の粉体であることを突き止めた。そして,エピ成膜条件を改良することにより,キラー欠陥を従来の10分の1以下の0.7個/cm2まで低減した第3世代β-Ga2O3100mmエピウエハーを実現した。
このエピウエハー面内9点の膜厚分布とドナー濃度分布を測定したところ,それぞれ10μm±5%程度,1×1016cm-3±7%程度と非常に小さく,第2世代エピウエハーのおよそ7分の1に改善していることがわかった。
つぎにβ-Ga2O3ショットキーバリアダイオードを試作し,電気特性とキラー欠陥密度を評価したところ,ダイオードの正常な順方向特性が得られていることが分かった。最大電流値は300A~500A流すことが可能。逆方向特性は,200V程度加えてもリーク電流は10-7A程度に抑制できた。デバイスに電極終端構造を設けることで,600V~1200V程度の耐圧が得られると推定されるという。
試作した10mm×10mmのβ-Ga2O3ショットキーバリアダイオードの逆方向特性歩留まりは51%であり,その値と今回実証に用いた電極サイズから,キラー欠陥密度は0.7個/cm2程度と推定された。これは,100A級のβ-Ga2O3パワーデバイスを,80%程度の歩留まりで製造可能なことを意味するという。
ノベルクリスタルテクノロジーは第3世代β-Ga2O3100mmエピウエハーの販売を早期に開始する。今後,キラー欠陥のさらなる低減と大口径化,1200V耐圧トレンチ型ショットキーバリアダイオードの量産技術の構築を進めるとしている。