京大ら,純中性原子核の三体系の探索実験を施行

著者: sugi

京都大学,東北大学,倍ハンプトン大学は,米ジェファーソン研究所(JLab)において,電荷を持たない純中性原子核であるラムダ-中性子-中性子(Λnn)の三体系の探索実験を施行し,反応確率(反応断面積)の上限値を決定することに初めて成功した(ニュースリリース)。

これまで完全に電気的に中性な粒子で構成されている原子核(原子番号ゼロの原子核)存在しないと考えられてきた。

しかし,2013年,ラムダ粒子(Λ)一つ,中性子(n)二つで構成される三体系原子核であるΛnnのエネルギー的に安定な状態(束縛状態)の存在が実験的に示唆されたが,最新の原子核物理の知見をもってしてもその存在は再現できていない。

研究グループは,Λnn原子核を調べるための実験をJLabの大強度高エネルギー電子ビームを用いて行なった。この実験では,入射電子により原子核中の陽子をΛに変換し,原子核中
にΛを埋め込む(ハイパー核電磁生成分光)。

データ解析の結果,実験では統計的な有意性をもってΛnn原子核の信号を確認できなかった。しかし,得られたエネルギー分布 (スペクトラム) の詳細な解析により,電磁生成によるΛnn原子核の生成確率(生成断面積)の上限値を決めることに世界で初めて成功した。

Λnnの生成確率と重粒子間相互作用には関係があるため,実験結果と理論計算との比較によりΛnnの束縛状態の存否や,Λ-核子相互作用への新しい制約を課すことができると期待されるという。

特にΛ-n間の相互作用研究は直接的な実験データ(散乱実験データ)を取得することが技術的に難しく,これまでそのようなデータは存在しないため,この実験で行なったようなスペクトラム解析による間接的なアプローチを用いた重粒子相互作用の研究が重要な働きをするとしている。

研究グループは,Λnn原子核の測定に対してより高感度な新しい実験を展開することを検討している。実験標的や磁気分光器の設計・設定の最適化により,統計量,エネルギー分解能,信号・ノイズ比を改善し,信号感度として5倍以上高めることが期待できるとする。

さらに,信号感度のみならず,エネルギーの決定精度を100keVの以下の誤差で抑えるような設計を行ない,Λnn原子核の束縛状態の存否を精密質量測定実験により決定することを計画している。

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