大阪大学の研究グループは,金ナノ粒子の表面にパラジウムをコーティングすると,コーティングをしている最中に内部の金と表面のパラジウムが入れ替わり,表面が金でコーティングされたナノ粒子が形成される様子をリアルタイムに捉えることに成功した(ニュースリリース)。
2種類の金属を使ってナノ粒子を作製すると,両者が混ざった構造や,一方の金属が内部に集まり他方の金属が表面をコーティングする構造などになることが知られている。これらの構造は,金属の組み合わせによって異なるだけでなく,ナノ粒子の作製方法によっても異なる。
ナノ粒子は触媒や水素ガスセンサの材料として使われるが,それらの性質は表面をコーティングする金属によって変化する。したがって,所望の性質をもったナノ粒子を作製するには,表面をコーティングする金属を選択する技術が必要になる。しかし,そもそもどのような過程を経てナノ粒子が形成されるかをリアルタイムに観察することは困難だった。
今回研究では,ナノ粒子の形成過程をリアルタイムに観察する手法を開発した。これは,圧電体の共鳴振動を利用するこれまでにない手法。また,分子動力学法による原子スケールでのシミュレーションも行なった。
これらの手法を用いて,金属原子を基板上に堆積させてナノ粒子を作製する際に,2種類の金属がどのようにナノ粒子を形成するかを調べた。具体的には,ある金属原子(金属A)を平板(基板)の上に堆積させてナノ粒子を作製した後に,その上に別の金属原子(金属B)を堆積させて層状のナノ粒子を作製した。
すると,パラジウムと銀を組み合わせたナノ粒子では,先に堆積させた金属Aがナノ粒子の内部に存在し,後に堆積させた金属Bが表面をコーティングしたナノ粒子が形成された。ところが,最初に金を堆積させ,その上にパラジウムを堆積させると,金がナノ粒子表面をコーティングするように拡散することが分かった。
このように,研究ではナノ粒子の作製過程で内部と外側の金属が入れ替わる様子を検出することに初めて成功した。この現象は,金が他の金属に比べてナノ粒子内部や表面を拡散しやすいことが原因だと考えられるという。
この研究で開発した手法を用いると,金属ナノ粒子が形成されるプロセスをリアルタイムに観察することが可能になり,任意の表面構造を有したナノ粒子の作製も可能になると考えられる。研究グループはこの成果が,優れた性質をもったナノ粒子の開発に貢献し,カーボンニュートラルな社会の実現に貢献するものだとしている。